第2９回日本病理学会近畿支部学術集会検討症例

６２２：当初，画像的に転移性肺癌疑いとされた1例

市立堺病院　病理・研究科(1)、呼吸器内科(2)、大阪労災病院　病理科(3)

和田直樹1)、山内道子1)、太田　浩世2)、岡崎　浩2)、川野　潔3)

投票結果

10　
1
3　
2　
1
1　
1　

　

Metastatic endometrial stromal sarcoma
　（うちhigh grade）
Pulmonary blastoma
Small cell carcinoma
　（うちNeuroectodermal）
Primitive neuroectodermal tumor
Neuroectodermal tumor of uterus

検討結果
Metastatic endometrial stromal sarcoma

症例 60才代前半，女性

経過
【既往歴】50才代前半，子宮肉腫にて子宮・卵巣全摘術(本人談)

【現病歴･現症】9か月前より咳嗽(乾性)があり，3日前から右側腹部痛も出現し，当院内科外来受診．胸部Xpにて右下肺野に異常陰影認め，胸部CTにて転移性肺癌疑いとされ，造影CTにて精査予約された．しかし，近所で評判の某総合病院で診察を希望され，当院より紹介．その後，某総合病院にて造影CT撮影後，入院と精査を勧められたが，諸事情により，当院での入院，精査を希望され，2ヶ月後に呼吸器内科入院．入院翌日に経皮的肺生検施行．50才代前半，A病院で手術された子宮肉腫の標本を照会し，入院後1ヶ月に病理最終診断．入院中の造影CTにて左房内浸潤，肝浸潤がうかがえた．手術の適応の有無についてコンサルトするも手術適応外と判断される．化学療法について御本人に説明するも，御本人の希望として，化学療法をせずにこのまま退院し，自宅療養となった．入院後2ヶ月半後退院され，無症状で自宅療養されていたが，その後，容態急変し，B病院に救急搬送されたが，永眠．B病院にて剖検施行されず．臨床的には肺塞栓で亡くなったと思われるとのことである．

【病理組織学的所見】クロマチン量が比較的多い類円形～卵円形～短紡錘形の核を有し境界不明瞭な淡明～淡好酸性～好酸性胞体をもった内膜間質細胞類似腫瘍細胞がびまん性密に増生する．鍍銀染色ではすだれ様に腫瘍細胞を取り囲む像がうかがえる．比較的壁の薄い血管を伴い，腔隙が細長い血管も散見される．
腺様構造を示す上皮細胞もみるが, 腫瘍に巻き込まれた細気管支の可能性もある．線維化ないし硝子化を伴って腫瘍細胞がまばらになる像もみる．myxoid changeがうかがえるところもみられる(Al-blue陽性)．mitosisを散見するが，5mf/10hpf程度である．内膜間質細胞類似腫瘍細胞の免染態度は以下の通りである．
CK(-)，EMA(-)，Vimentin(+)，S-100(-)，Desmin(-)，α-SMA(-)，
Myoglobin(-)，Chromogranin-A(-)，CD56(NCAM)(+)，Synaptophysin(+)，
ER(+)，PgR(focal positive)，Ki-67(MIB-1) labeling index:44%
＊CK，EMAは上皮様細胞では陽性

（標本が小さいため、組織像等はインターネット公開画像を御参照下さい）

写真対物1．25HE_全体像、対物10HE_myxoid change、対物10HE_腔隙が細長い血管、対物10HE_線維化ないし硝子化、対物10HE_腺、対物10Ki67_1、対物10Ki67_2、対物10PgR、対物10Al-blue_myxoid change、対物10CK、対物10EMA、対物10ER、対物20HE_びまん性密な#C57F2、対物20HE_線維化ないし硝子化、対物20Ag_すだれ様、対物20CD56(NCAM)、対物20Synaptophysin_#C57F4、対物20vimentin、対物40HE_mitosis1、対物40HE_mitosis2

６２３：右臀部腫瘤，右下肢浮腫や血痰などの症状を呈し，肺癌が疑われた１例

田附興風会北野病院　臨床病理部(1)、京都大学　腫瘍生物学(2)、大阪大学　微生物病研究所(3)、大阪歯科大学口腔病理学(4)

鷹巣晃昌1)、香月奈穂美1)、劉　洪波1)、高橋　玲2)、原　重雄3)、和唐雅博4)

投票結果

6　
1
1
1
1
1
1　
1　
4　
2　
1
1
1　

　　　　

Metastatic carcinoma
　(うちSkin adnexal cancer原発)
　(うちLarge celled carcinoma)
Adenocarcinoma of lung
Adenocarcinoma
Lymphoepithelioma-like carcinoma
Clear cell carcinoma
Carcinoma with rhabdoid feature
Anaplastic large cell lymphoma
Malignant melanoma
　(うちMetastatic) 　
　(うちRhabdoid)
Metastatic undifferentiated epithelial tumor

検討結果
Epithelioid sarcoma

症例５０歳代後半，女性

経過
【主訴】右下肢浮腫，背部痛

【既往歴】糖尿病

【職業】主婦

【その他】繊維工場（自営）

【現病歴】当院受診の（以下同様）２年前から右臀部腫瘤に気づいていたが，放置していた．5ヶ月前頃、右鼠径部リンパ節腫脹し，3ヶ月前頃に右下肢浮腫を自覚した．２ヶ月前には血痰を認めたので近医受診し，胸部Xpを受けたところ，左上肺野に腫瘤影を指摘され，精査を勧められた．　　　
受診１月前，某院入院．右鼠径部穿刺吸引細胞診および気管支鏡検査から，ClassIV, Adenocarcinomaとされ，肺癌stage IVと言われた．
程なく2nd opinion目的にて本院胸部外科受診．右鼠径部リンパ節生検を施行．悪性中皮腫など考慮したが臀部腫瘤などより，肉腫も疑われ，臀部腫瘤生検が施行された．続いて頭部皮下腫瘤や右頸部リンパ節腫脹を来たし，肺原発も除外困難であったことから，双方の生検も実施された．

【入院時検査成績】（検体検査成績：省略）

【入院時MR検査】右臀部皮下軟部陰影．右大腿腫大・皮下軟部陰影，浮腫．右鼠径部リンパ節腫大

【問題点】病理組織診断
（右頸部リンパ節生検）

写真 623_1.jpg、623_2.jpg、623_3.jpg

６２２：当初，画像的に転移性肺癌疑いとされた1例市立堺病院　病理・研究科(1)、呼吸器内科(2)、大阪労災病院　病理科(3) 和田直樹1)、山内道子1)、太田　浩世2)、岡崎　浩2)、川野　潔3)
投票結果 10　 1 3　 2　 1 1　 1	Metastatic endometrial stromal sarcoma 　（うちhigh grade） Pulmonary blastoma Small cell carcinoma 　（うちNeuroectodermal） Primitive neuroectodermal tumor Neuroectodermal tumor of uterus
検討結果	Metastatic endometrial stromal sarcoma
症例	60才代前半，女性
経過	【既往歴】50才代前半，子宮肉腫にて子宮・卵巣全摘術(本人談) 【現病歴･現症】9か月前より咳嗽(乾性)があり，3日前から右側腹部痛も出現し，当院内科外来受診．胸部Xpにて右下肺野に異常陰影認め，胸部CTにて転移性肺癌疑いとされ，造影CTにて精査予約された．しかし，近所で評判の某総合病院で診察を希望され，当院より紹介．その後，某総合病院にて造影CT撮影後，入院と精査を勧められたが，諸事情により，当院での入院，精査を希望され，2ヶ月後に呼吸器内科入院．入院翌日に経皮的肺生検施行．50才代前半，A病院で手術された子宮肉腫の標本を照会し，入院後1ヶ月に病理最終診断．入院中の造影CTにて左房内浸潤，肝浸潤がうかがえた．手術の適応の有無についてコンサルトするも手術適応外と判断される．化学療法について御本人に説明するも，御本人の希望として，化学療法をせずにこのまま退院し，自宅療養となった．入院後2ヶ月半後退院され，無症状で自宅療養されていたが，その後，容態急変し，B病院に救急搬送されたが，永眠．B病院にて剖検施行されず．臨床的には肺塞栓で亡くなったと思われるとのことである．【病理組織学的所見】クロマチン量が比較的多い類円形～卵円形～短紡錘形の核を有し境界不明瞭な淡明～淡好酸性～好酸性胞体をもった内膜間質細胞類似腫瘍細胞がびまん性密に増生する．鍍銀染色ではすだれ様に腫瘍細胞を取り囲む像がうかがえる．比較的壁の薄い血管を伴い，腔隙が細長い血管も散見される．腺様構造を示す上皮細胞もみるが, 腫瘍に巻き込まれた細気管支の可能性もある．線維化ないし硝子化を伴って腫瘍細胞がまばらになる像もみる．myxoid changeがうかがえるところもみられる(Al-blue陽性)．mitosisを散見するが，5mf/10hpf程度である．内膜間質細胞類似腫瘍細胞の免染態度は以下の通りである． CK(-)，EMA(-)，Vimentin(+)，S-100(-)，Desmin(-)，α-SMA(-)， Myoglobin(-)，Chromogranin-A(-)，CD56(NCAM)(+)，Synaptophysin(+)， ER(+)，PgR(focal positive)，Ki-67(MIB-1) labeling index:44% ＊CK，EMAは上皮様細胞では陽性（標本が小さいため、組織像等はインターネット公開画像を御参照下さい）
写真	対物1．25HE_全体像、対物10HE_myxoid change、対物10HE_腔隙が細長い血管、対物10HE_線維化ないし硝子化、対物10HE_腺、対物10Ki67_1、対物10Ki67_2、対物10PgR、対物10Al-blue_myxoid change、対物10CK、対物10EMA、対物10ER、対物20HE_びまん性密な#C57F2、対物20HE_線維化ないし硝子化、対物20Ag_すだれ様、対物20CD56(NCAM)、対物20Synaptophysin_#C57F4、対物20vimentin、対物40HE_mitosis1、対物40HE_mitosis2

６２３：右臀部腫瘤，右下肢浮腫や血痰などの症状を呈し，肺癌が疑われた１例田附興風会北野病院　臨床病理部(1)、京都大学　腫瘍生物学(2)、大阪大学　微生物病研究所(3)、大阪歯科大学口腔病理学(4) 鷹巣晃昌1)、香月奈穂美1)、劉　洪波1)、高橋　玲2)、原　重雄3)、和唐雅博4)
投票結果 6　 1 1 1 1 1 1　 1　 4　 2　 1 1 1	Metastatic carcinoma 　(うちSkin adnexal cancer原発) 　(うちLarge celled carcinoma) Adenocarcinoma of lung Adenocarcinoma Lymphoepithelioma-like carcinoma Clear cell carcinoma Carcinoma with rhabdoid feature Anaplastic large cell lymphoma Malignant melanoma 　(うちMetastatic) 　　(うちRhabdoid) Metastatic undifferentiated epithelial tumor
検討結果	Epithelioid sarcoma
症例	５０歳代後半，女性
経過	【主訴】右下肢浮腫，背部痛【既往歴】糖尿病【職業】主婦【その他】繊維工場（自営）【現病歴】当院受診の（以下同様）２年前から右臀部腫瘤に気づいていたが，放置していた．5ヶ月前頃、右鼠径部リンパ節腫脹し，3ヶ月前頃に右下肢浮腫を自覚した．２ヶ月前には血痰を認めたので近医受診し，胸部Xpを受けたところ，左上肺野に腫瘤影を指摘され，精査を勧められた．　　　受診１月前，某院入院．右鼠径部穿刺吸引細胞診および気管支鏡検査から，ClassIV, Adenocarcinomaとされ，肺癌stage IVと言われた．程なく2nd opinion目的にて本院胸部外科受診．右鼠径部リンパ節生検を施行．悪性中皮腫など考慮したが臀部腫瘤などより，肉腫も疑われ，臀部腫瘤生検が施行された．続いて頭部皮下腫瘤や右頸部リンパ節腫脹を来たし，肺原発も除外困難であったことから，双方の生検も実施された．【入院時検査成績】（検体検査成績：省略）【入院時MR検査】右臀部皮下軟部陰影．右大腿腫大・皮下軟部陰影，浮腫．右鼠径部リンパ節腫大【問題点】病理組織診断（右頸部リンパ節生検）
写真	623_1.jpg、623_2.jpg、623_3.jpg

６２４：小児舌腫瘍の一症例

滋賀医科大学第一病理 (1)、滋賀医科大学附属病院病理部(2)、滋賀医科大学検査部 (3)、国立病院機構滋賀病院耳鼻科(4)

中村悦子1)、九嶋亮治 2)、岡部英俊２，3)、服部隆則１)、福島一登４）

　　投票結果

4　
1
2　
2　
2　
2　
1　
1　
1　
1　
1　
1　

　　　

Hemangioendothelioma
　　　（うちEpithelioid）
Capillary hemangioma (Jevenile form)
Paraganglioma
Granular cell tumor
Alveolar soft part sarcoma
Hemangioblastoma
Myofibroma
Histiocytosis X
Rhabdomyoma
Infantile myofibroma
Myoblastoma(granular cell tumor)

検討結果
Alveolar soft part sarcoma

症例０歳代前半、女性

経過
【既往歴】　特記すべきことはなし。

【臨床経過】　舌腫瘤を自覚し来院。舌に5-6mm大の腫瘤を認め、腫瘤切除術が行われた。

【病理肉眼所見】　境界明瞭な円形の腫瘤（マクロ写真はありません）。

【問題点】　病理学的診断、良悪性、治療方針について
（配付標本は舌内腫瘤三切片。小さい標本なので、一部の標本で面が飛んでしまっています。ご了承ください）。

写真ルーペ、弱拡、中拡、強拡1、強拡2、強拡3

６２４：小児舌腫瘍の一症例滋賀医科大学第一病理 (1)、滋賀医科大学附属病院病理部(2)、滋賀医科大学検査部 (3)、国立病院機構滋賀病院耳鼻科(4) 中村悦子1)、九嶋亮治 2)、岡部英俊２，3)、服部隆則１)、福島一登４）
投票結果 4　 1 2　 2　 2　 2　 1　 1　 1　 1　 1　 1	Hemangioendothelioma 　　　（うちEpithelioid） Capillary hemangioma (Jevenile form) Paraganglioma Granular cell tumor Alveolar soft part sarcoma Hemangioblastoma Myofibroma Histiocytosis X Rhabdomyoma Infantile myofibroma Myoblastoma(granular cell tumor)
検討結果	Alveolar soft part sarcoma
症例	０歳代前半、女性
経過	【既往歴】　特記すべきことはなし。【臨床経過】　舌腫瘤を自覚し来院。舌に5-6mm大の腫瘤を認め、腫瘤切除術が行われた。【病理肉眼所見】　境界明瞭な円形の腫瘤（マクロ写真はありません）。【問題点】　病理学的診断、良悪性、治療方針について（配付標本は舌内腫瘤三切片。小さい標本なので、一部の標本で面が飛んでしまっています。ご了承ください）。
写真	ルーペ、弱拡、中拡、強拡1、強拡2、強拡3

６２５：眼球内腫瘍の１例

大阪大学大学院医学研究科　病態病理学(1)、　眼科(2)

藤田茂樹１）　星田義彦１）　大黒伸行２）　西宇美恵子１）　森井英一１）　　　
冨田裕彦１）　青笹克之１）

投票結果

5　
3　
3　
3　
2
1　
1　
1　
1　

　　　　

Mesectodermal leiomyoma
Neuroblastoma
Ependymoma
Astrocytoma
　（うちGrade II)
Glioneuroma
Ectopic glioma
Malignant melanoma
Glioma with ependymal element

検討結果
Mesectodermal leiomyoma

症例１０歳代後半、女性

経過
【主訴】視野障害

【既往歴、家族歴】特記事項無し

【現病歴】半年前頃より右眼鼻側結膜に充血を認めた．右上方の霧視が出現し，視野障害が急速に進行した．２ヶ月後，網膜剥離を伴う右毛様体腫瘍を指摘された．悪性黒色腫を疑い，１１ヶ月後，右眼球摘出術を施行した．

【画像所見】MRIにて眼球にT1 high, T2 iso-densityの腫瘍を認める．
123I IMP SPEC にて右眼球に集積増を認める．他に転移を認めない．

【マクロ所見】脈絡膜下に境界明瞭，弾性硬， 20x20x16mmの白色の腫瘤を認めた．

写真マクロ、×20、×40、×400

６２５：眼球内腫瘍の１例大阪大学大学院医学研究科　病態病理学(1)、　眼科(2) 藤田茂樹１）　星田義彦１）　大黒伸行２）　西宇美恵子１）　森井英一１）　　　冨田裕彦１）　青笹克之１）
投票結果 5　 3　 3　 3　 2 1　 1　 1　 1	Mesectodermal leiomyoma Neuroblastoma Ependymoma Astrocytoma 　（うちGrade II) Glioneuroma Ectopic glioma Malignant melanoma Glioma with ependymal element
検討結果	Mesectodermal leiomyoma
症例	１０歳代後半、女性
経過	【主訴】視野障害【既往歴、家族歴】特記事項無し【現病歴】半年前頃より右眼鼻側結膜に充血を認めた．右上方の霧視が出現し，視野障害が急速に進行した．２ヶ月後，網膜剥離を伴う右毛様体腫瘍を指摘された．悪性黒色腫を疑い，１１ヶ月後，右眼球摘出術を施行した．【画像所見】MRIにて眼球にT1 high, T2 iso-densityの腫瘍を認める． 123I IMP SPEC にて右眼球に集積増を認める．他に転移を認めない．【マクロ所見】脈絡膜下に境界明瞭，弾性硬， 20x20x16mmの白色の腫瘤を認めた．
写真	マクロ、×20、×40、×400

６２６：脳内多巣性病巣を示し急速に神経症状が悪化した１例

奈良県立医科大学　病理病態学

中村光利、石田英和、島田啓司、小西　登

投票結果

　9　
2
2
1
1
1
3　
1　
1　
1　
1　

　

Astrocytoma
　（うちGanglioglioma）
　（うちAnaplastic）
　（うちGemistocytic astrocytoma, grade II）
　（うちOligoastrocytoma）
　（うちOligodendroglioma）
Progressive multifocal leucoencephalopathy
Acute demyelinating encephalomyelopathy
Multiple sclerosis
炎症性脱髄性疾患
Demyelinating pseudotumor

検討結果
Inflammatory demyelinating leucoencephalopathy

症例 30才代前半、男性

経過
【既往歴】家族歴：特記すべき事なし

【現病歴】本年初旬より不眠となり、意欲と判断力の低下を主訴に某院精神科受診し、抗不安薬の投与を受けたが、意思疎通性の低下、便失禁や歩行障害の出現など症状は悪化した。初診後１ヶ月、最初に施行された頭部CTで異常を指摘され、某院脳神経外科へ紹介入院となる。入院時神経学的異常所見ではJapanese coma scale; 20、dyscalculia、4/5程度の右上下肢麻痺を認めた。

【入院後経過】入院直後から神経症状の悪化（2/5程度の右上下肢麻痺、経口摂取不能、意思疎通不能）を認めたため、ステロイドを投与した。投与後10日目頃には入院時の神経症状にまで改善した。

【画像所見】転院翌日のMRIで、両側大脳半球皮質下白質から深部白質に分布する多巣性病変がみられた。これらの病変の辺縁部の一部では不均一な造影効果を伴っている。転院後３週間（生検前日）で多巣性白質病変に明らかな増大所見はみられないが、造影効果を示す病巣辺縁部の位置が変化し、造影効果も強くなっている。最大の病変部である左前頭葉内の造影される部位に対して、定位脳手術が施行され組織標本を採取した。（供覧）

【問題点】病理組織診断

写真 IMAGE001、IMAGE002、IMAGE003、IMAGE004

６２６：脳内多巣性病巣を示し急速に神経症状が悪化した１例奈良県立医科大学　病理病態学中村光利、石田英和、島田啓司、小西　登
投票結果　9　 2 2 1 1 1 3　 1　 1　 1　 1	Astrocytoma 　（うちGanglioglioma）　（うちAnaplastic）　（うちGemistocytic astrocytoma, grade II）　（うちOligoastrocytoma）　（うちOligodendroglioma） Progressive multifocal leucoencephalopathy Acute demyelinating encephalomyelopathy Multiple sclerosis 炎症性脱髄性疾患 Demyelinating pseudotumor
検討結果	Inflammatory demyelinating leucoencephalopathy
症例	30才代前半、男性
経過	【既往歴】家族歴：特記すべき事なし【現病歴】本年初旬より不眠となり、意欲と判断力の低下を主訴に某院精神科受診し、抗不安薬の投与を受けたが、意思疎通性の低下、便失禁や歩行障害の出現など症状は悪化した。初診後１ヶ月、最初に施行された頭部CTで異常を指摘され、某院脳神経外科へ紹介入院となる。入院時神経学的異常所見ではJapanese coma scale; 20、dyscalculia、4/5程度の右上下肢麻痺を認めた。【入院後経過】入院直後から神経症状の悪化（2/5程度の右上下肢麻痺、経口摂取不能、意思疎通不能）を認めたため、ステロイドを投与した。投与後10日目頃には入院時の神経症状にまで改善した。【画像所見】転院翌日のMRIで、両側大脳半球皮質下白質から深部白質に分布する多巣性病変がみられた。これらの病変の辺縁部の一部では不均一な造影効果を伴っている。転院後３週間（生検前日）で多巣性白質病変に明らかな増大所見はみられないが、造影効果を示す病巣辺縁部の位置が変化し、造影効果も強くなっている。最大の病変部である左前頭葉内の造影される部位に対して、定位脳手術が施行され組織標本を採取した。（供覧）【問題点】病理組織診断
写真	IMAGE001、IMAGE002、IMAGE003、IMAGE004

６２7：脳内多発病変の一小児例

大阪市立総合医療センター　病理部(1)、南大阪病院(2)

井上　健1）、裴　英洙1）、小林庸次1）2）

投票結果

　7　
1
1　
1　
1　
1　
1　
1　

　　

Malignant Lymphoma
　　（うちAnaplastic large cell）
Glioma
Reticulohistiocytosis
Primitive neuroectodermal tumor
Subacute sclerosing panencephalitis
Medulloblastoma
Atypical teratoid/rhabdoid tumor

検討結果
Malignant Lymphoma, anaplastic large cell type

症例 10歳代前半、女児

経過
【主訴】頭痛、発熱、意識障害

【現病歴】
　頭痛、発熱にて近医受診し髄液中の糖が低値であったことから結核性髄膜炎と診断され、抗結核治療をされた。その2ヶ月後になり、視力障害、意識障害が出現しMRIで多発性硬化症が疑われた。ステロイドパルス療法開始され、これらの症状は一旦改善したが、ステロイドを中断するとMRIで造影効果を受ける病変が増大するとともに、新規病巣も出現するようになった。確定診断のため左基底核定位脳生検術が施行された。

【画像所見】（MRI）
ステロイド投与前：視交叉～両側視神経、両側前頭葉、側頭葉皮質下白質、右大脳脚、両側視床にT2強調像で高信号、造影効果を受ける病巣が多発性に散在
ステロイド投与後：上記病変はほぼ消失
ステロイド中止２ヶ月後：右側頭葉前部、側脳室周囲、右大脳脚、両側視床の病変は増大、右前頭葉上部には新たな病変が出現したが、両側前頭葉皮質下の病変は縮小したまま

（標本が小さいため、組織像等はインターネット公開画像を御参照下さい）

写真 MRI、HE1、HE2、HE3

６２２：当初，画像的に転移性肺癌疑いとされた1例市立堺病院　病理・研究科(1)、呼吸器内科(2)、大阪労災病院　病理科(3) 和田直樹1)、山内道子1)、太田　浩世2)、岡崎　浩2)、川野　潔3)
投票結果 10　 1 3　 2　 1 1　 1	Metastatic endometrial stromal sarcoma 　（うちhigh grade） Pulmonary blastoma Small cell carcinoma 　（うちNeuroectodermal） Primitive neuroectodermal tumor Neuroectodermal tumor of uterus
検討結果	Metastatic endometrial stromal sarcoma
症例	60才代前半，女性
経過	【既往歴】50才代前半，子宮肉腫にて子宮・卵巣全摘術(本人談) 【現病歴･現症】9か月前より咳嗽(乾性)があり，3日前から右側腹部痛も出現し，当院内科外来受診．胸部Xpにて右下肺野に異常陰影認め，胸部CTにて転移性肺癌疑いとされ，造影CTにて精査予約された．しかし，近所で評判の某総合病院で診察を希望され，当院より紹介．その後，某総合病院にて造影CT撮影後，入院と精査を勧められたが，諸事情により，当院での入院，精査を希望され，2ヶ月後に呼吸器内科入院．入院翌日に経皮的肺生検施行．50才代前半，A病院で手術された子宮肉腫の標本を照会し，入院後1ヶ月に病理最終診断．入院中の造影CTにて左房内浸潤，肝浸潤がうかがえた．手術の適応の有無についてコンサルトするも手術適応外と判断される．化学療法について御本人に説明するも，御本人の希望として，化学療法をせずにこのまま退院し，自宅療養となった．入院後2ヶ月半後退院され，無症状で自宅療養されていたが，その後，容態急変し，B病院に救急搬送されたが，永眠．B病院にて剖検施行されず．臨床的には肺塞栓で亡くなったと思われるとのことである．【病理組織学的所見】クロマチン量が比較的多い類円形～卵円形～短紡錘形の核を有し境界不明瞭な淡明～淡好酸性～好酸性胞体をもった内膜間質細胞類似腫瘍細胞がびまん性密に増生する．鍍銀染色ではすだれ様に腫瘍細胞を取り囲む像がうかがえる．比較的壁の薄い血管を伴い，腔隙が細長い血管も散見される．腺様構造を示す上皮細胞もみるが, 腫瘍に巻き込まれた細気管支の可能性もある．線維化ないし硝子化を伴って腫瘍細胞がまばらになる像もみる．myxoid changeがうかがえるところもみられる(Al-blue陽性)．mitosisを散見するが，5mf/10hpf程度である．内膜間質細胞類似腫瘍細胞の免染態度は以下の通りである． CK(-)，EMA(-)，Vimentin(+)，S-100(-)，Desmin(-)，α-SMA(-)， Myoglobin(-)，Chromogranin-A(-)，CD56(NCAM)(+)，Synaptophysin(+)， ER(+)，PgR(focal positive)，Ki-67(MIB-1) labeling index:44% ＊CK，EMAは上皮様細胞では陽性（標本が小さいため、組織像等はインターネット公開画像を御参照下さい）
写真	対物1．25HE_全体像、対物10HE_myxoid change、対物10HE_腔隙が細長い血管、対物10HE_線維化ないし硝子化、対物10HE_腺、対物10Ki67_1、対物10Ki67_2、対物10PgR、対物10Al-blue_myxoid change、対物10CK、対物10EMA、対物10ER、対物20HE_びまん性密な#C57F2、対物20HE_線維化ないし硝子化、対物20Ag_すだれ様、対物20CD56(NCAM)、対物20Synaptophysin_#C57F4、対物20vimentin、対物40HE_mitosis1、対物40HE_mitosis2

６２４：小児舌腫瘍の一症例滋賀医科大学第一病理 (1)、滋賀医科大学附属病院病理部(2)、滋賀医科大学検査部 (3)、国立病院機構滋賀病院耳鼻科(4) 中村悦子1)、九嶋亮治 2)、岡部英俊２，3)、服部隆則１)、福島一登４）
投票結果 4　 1 2　 2　 2　 2　 1　 1　 1　 1　 1　 1	Hemangioendothelioma 　　　（うちEpithelioid） Capillary hemangioma (Jevenile form) Paraganglioma Granular cell tumor Alveolar soft part sarcoma Hemangioblastoma Myofibroma Histiocytosis X Rhabdomyoma Infantile myofibroma Myoblastoma(granular cell tumor)
検討結果	Alveolar soft part sarcoma
症例	０歳代前半、女性
経過	【既往歴】　特記すべきことはなし。【臨床経過】　舌腫瘤を自覚し来院。舌に5-6mm大の腫瘤を認め、腫瘤切除術が行われた。【病理肉眼所見】　境界明瞭な円形の腫瘤（マクロ写真はありません）。【問題点】　病理学的診断、良悪性、治療方針について（配付標本は舌内腫瘤三切片。小さい標本なので、一部の標本で面が飛んでしまっています。ご了承ください）。
写真	ルーペ、弱拡、中拡、強拡1、強拡2、強拡3

６２５：眼球内腫瘍の１例大阪大学大学院医学研究科　病態病理学(1)、　眼科(2) 藤田茂樹１）　星田義彦１）　大黒伸行２）　西宇美恵子１）　森井英一１）　　　冨田裕彦１）　青笹克之１）
投票結果 5　 3　 3　 3　 2 1　 1　 1　 1	Mesectodermal leiomyoma Neuroblastoma Ependymoma Astrocytoma 　（うちGrade II) Glioneuroma Ectopic glioma Malignant melanoma Glioma with ependymal element
検討結果	Mesectodermal leiomyoma
症例	１０歳代後半、女性
経過	【主訴】視野障害【既往歴、家族歴】特記事項無し【現病歴】半年前頃より右眼鼻側結膜に充血を認めた．右上方の霧視が出現し，視野障害が急速に進行した．２ヶ月後，網膜剥離を伴う右毛様体腫瘍を指摘された．悪性黒色腫を疑い，１１ヶ月後，右眼球摘出術を施行した．【画像所見】MRIにて眼球にT1 high, T2 iso-densityの腫瘍を認める． 123I IMP SPEC にて右眼球に集積増を認める．他に転移を認めない．【マクロ所見】脈絡膜下に境界明瞭，弾性硬， 20x20x16mmの白色の腫瘤を認めた．
写真	マクロ、×20、×40、×400

６２６：脳内多巣性病巣を示し急速に神経症状が悪化した１例奈良県立医科大学　病理病態学中村光利、石田英和、島田啓司、小西　登
投票結果　9　 2 2 1 1 1 3　 1　 1　 1　 1	Astrocytoma 　（うちGanglioglioma）　（うちAnaplastic）　（うちGemistocytic astrocytoma, grade II）　（うちOligoastrocytoma）　（うちOligodendroglioma） Progressive multifocal leucoencephalopathy Acute demyelinating encephalomyelopathy Multiple sclerosis 炎症性脱髄性疾患 Demyelinating pseudotumor
検討結果	Inflammatory demyelinating leucoencephalopathy
症例	30才代前半、男性
経過	【既往歴】家族歴：特記すべき事なし【現病歴】本年初旬より不眠となり、意欲と判断力の低下を主訴に某院精神科受診し、抗不安薬の投与を受けたが、意思疎通性の低下、便失禁や歩行障害の出現など症状は悪化した。初診後１ヶ月、最初に施行された頭部CTで異常を指摘され、某院脳神経外科へ紹介入院となる。入院時神経学的異常所見ではJapanese coma scale; 20、dyscalculia、4/5程度の右上下肢麻痺を認めた。【入院後経過】入院直後から神経症状の悪化（2/5程度の右上下肢麻痺、経口摂取不能、意思疎通不能）を認めたため、ステロイドを投与した。投与後10日目頃には入院時の神経症状にまで改善した。【画像所見】転院翌日のMRIで、両側大脳半球皮質下白質から深部白質に分布する多巣性病変がみられた。これらの病変の辺縁部の一部では不均一な造影効果を伴っている。転院後３週間（生検前日）で多巣性白質病変に明らかな増大所見はみられないが、造影効果を示す病巣辺縁部の位置が変化し、造影効果も強くなっている。最大の病変部である左前頭葉内の造影される部位に対して、定位脳手術が施行され組織標本を採取した。（供覧）【問題点】病理組織診断
写真	IMAGE001、IMAGE002、IMAGE003、IMAGE004

６２7：脳内多発病変の一小児例大阪市立総合医療センター　病理部(1)、南大阪病院(2) 井上　健1）、裴　英洙1）、小林庸次1）2）
投票結果　7　 1 1　 1　 1　 1　 1　 1	Malignant Lymphoma 　　（うちAnaplastic large cell） Glioma Reticulohistiocytosis Primitive neuroectodermal tumor Subacute sclerosing panencephalitis Medulloblastoma Atypical teratoid/rhabdoid tumor
検討結果	Malignant Lymphoma, anaplastic large cell type
症例	10歳代前半、女児
経過	【主訴】頭痛、発熱、意識障害【現病歴】　頭痛、発熱にて近医受診し髄液中の糖が低値であったことから結核性髄膜炎と診断され、抗結核治療をされた。その2ヶ月後になり、視力障害、意識障害が出現しMRIで多発性硬化症が疑われた。ステロイドパルス療法開始され、これらの症状は一旦改善したが、ステロイドを中断するとMRIで造影効果を受ける病変が増大するとともに、新規病巣も出現するようになった。確定診断のため左基底核定位脳生検術が施行された。【画像所見】（MRI）ステロイド投与前：視交叉～両側視神経、両側前頭葉、側頭葉皮質下白質、右大脳脚、両側視床にT2強調像で高信号、造影効果を受ける病巣が多発性に散在ステロイド投与後：上記病変はほぼ消失ステロイド中止２ヶ月後：右側頭葉前部、側脳室周囲、右大脳脚、両側視床の病変は増大、右前頭葉上部には新たな病変が出現したが、両側前頭葉皮質下の病変は縮小したまま（標本が小さいため、組織像等はインターネット公開画像を御参照下さい）
写真	MRI、HE1、HE2、HE3