新しい脳腫瘍組織型の病理と問題点
群馬大学大学院医学系研究科病態病理学 佐々木 惇

現在、脳腫瘍の病理診断は、WHOが2000年に出版した「脳腫瘍WHO分類第3版」(WHO2000と呼ぶ)に基づいて、分類されている。Global standardであるWHO2000分類で、新たに登録された腫瘍には、atypical teratoid/rhabdoid tumor (AT/RT)、pineal parenchymal tumor of intermediate differentiation (PPT-ID)などがある。さらにWHO2000に準拠した内容を有する本邦の脳腫瘍組織分類「脳腫瘍取扱い規約第2版」(2002年)では、新たに、pilomyxoid astrocytoma、papillary glioneuronal tumorなどが新規の診断名として登録されている。最近の論文発表では、両者の分類に未登録の脳腫瘍診断名もみられる。それらの脳腫瘍の多くは稀な腫瘍で、日常の病理診断で遭遇する可能性は低いが、高い悪性度の腫瘍もありその病理診断は極めて重要である。また、他の脳腫瘍と同様に、診断基準にすっきりとfitしない症例もしばしば存在する。今回は、非定型例を含む新規脳腫瘍自験例の臨床・病理所見を提示し、診断へのプロセスと鑑別診断での問題点を中心に解説したい。