中枢神経系感染症の病理
大阪赤十字病院病理部 新宅 雅幸


  中枢神経系に感染症を惹起し得る病原微生物は極めて多種にわたり、細菌、真菌、原虫、ウイルスなどに大別されるが、それらの一つ一つについて病理所見を述べることは時間的に到底不可能であるので、今回の講演では特に実際の病理診断に役立つような実践的ないくつかのポイントについて、演者の経験を基にして述べる。初歩的な組織像の説明は省略させて頂く。

1)感染症と誤診されることがある腫瘍性疾患ならびにその類縁疾患
    悪性リンパ腫、腫瘍に伴う肉芽腫性反応、頭蓋内 Rosai-Dorfman 病
2)感染症と類似の組織像を示す非感染性炎症性疾患
    Neuro-Behcet 病、primary angiitis of the CNS その他膠原病性疾患に伴う中枢神経系病変
3)一見変性疾患と類似の組織像を呈する感染症
    HIV 脳炎とその関連病変、HTLV-I-associated myelopathy (HAM)

の順で述べ、最後にその他の各種感染症の中で注意すべきいくつかの病理所見について、自験例を提示しながら簡単に述べたい。

(なお本講演の内容は、本年5月14日宇都宮市で行われた第46回日本神経病理学会総会の「教育コース」において演者が話したものとほぼ同一であることをお断りする。)