第30回日本病理学会近畿支部学術集会検討症例


628:気管支壁腫瘍

神戸赤十字病院

高橋 卓也

投票結果

Synovial sarcoma      5
(Primary monophasic synovial sarcoma of lung)
Solitary fibrous tumor 3
Leiomyosarcoma    2
Benign fibrous histiocytoma of bronchus 2
Myoepithelioma     2
Bronchial leiomyosarcoma 1
Fibrosarcoma 1
Inflammatory pseudotumor 1
Myofibroblastic sarcoma    1
Paraganglioma 1
Perivascular epithelioid cell tumor (PEComa) 1
Sarcomatoid carcinoma    1
Spindle cell carcinoma    1

検討結果

Synovial sarcoma, or amelanotic malignant melanoma
症例 30歳代後半、女性
経過 【主訴】CT 異常影
【既往歴】虫垂炎(14 歳時手術)、口蓋裂(7歳時手術)
【現病歴】受診の1ヶ月前より発熱・悪寒・咳嗽症状あり。近医を受診し胸部レントゲンにて肺炎を指摘され入院。CT にて左気管支内の腫瘍を疑われ気管支鏡検査を目的に当院呼吸器科紹介外来受診。気管支鏡検査にて左 B10-9入口部に乳頭状の隆起性病変を認め生検施行。病理組織学的に悪性腫瘍性病変と診断された。全身検索では他の部位に腫瘍性病変は確認できず。初診 より1ヶ月後、左肺下葉切除術が施行された。手術材料では気管支入口部を巻き込む形で大きさ 2×1.8×1.5 cm の光沢を持った白色均質充実性病変が認められた。手術材料から作成した腫瘍病変部 HE 標本を配布する。
【問題点】病理組織学的診断
写真

629:皮膚、関節を主体に組織球の著明な増殖を認めた1剖検例

大阪赤十字病院 病理部(1)、免疫・リウマチ科(2)

新宅 雅幸1)、竹内 孝男2)

投票結果

Langerhans' cell histiocytosis 4
Multicentric reticulohistiocytosis 4
Histiocytic sarcoma 2
Malignant histiocytosis 2
Crystalline-bearing histiocytosis 1
  with lymphoplasmacytic lymphoma 1
Hand-Schuller-Christian disease 1
RA & fluminant hemophagocytic syndrome 1
True histiocytic lymphoma 1
True histiocytic sarcoma 1

検討結果

Multicentric reticulohistiocytosis
症例 50歳代後半,女性
経過 【主訴】多発性関節痛、歩行困難、皮 疹
【既往歴】6年前より高血圧症
【家族歴】母に関節リウマチ
【現病歴】死亡の約15ヶ月前から身体のこわばり、膝から始まる多発性の関節痛、上肢、下肢の筋力低下と歩行障害などの症状が出現し、徐々に進行した。ま た顔面、前胸部、頸部に紅斑を認め、両肘外側部に疣贅状の隆起を生じた。リウマチ因子は陰性であり、多発性筋炎・皮膚筋炎も疑われたが、確定診断はつかな かった。ステロイド、リウマトレックス投与も余り有効ではなかった。皮膚生検を施行し、真皮に大型組織球の浸潤、増殖を認めた。死亡6ヶ月前、急に発熱を きたし、尿路感染症が疑われ、加療により解熱した。同時期に行われた骨シンチでは、徑骨遠位部や足関節部に強い取り込みを認め、重篤な関節炎、骨髄炎が疑 われた。その後、抗生物質などで加療を続けるも、関節痛などの症状は一進一退であった。死亡2ヶ月前に突然の徐脈、AV block をきたし、以後も同様の発作を起こしたため、ペースメーカーを装着していた。死亡前日に突然の心停止をきたし、いったん蘇生したが、死亡した。
ハ【病理解剖所見】関節滑膜、皮膚、骨格筋に腫大した組織球のび慢性、高度の浸潤。同様の細胞の浸潤は心、肺、脾、膵、食道、腸管など にも見られるが、その程度は軽い。心臓には陳旧性梗塞瘢痕の多発に加えて、心室中隔を中心に広範な新鮮梗塞巣が多発しており、直接死因と考えられる。その 他、ショック肝、低酸素性脳症、肺水腫などの所見を認める。
(送付標本は膝関節の滑膜)
写真 皮膚(弱拡大) 皮膚(中拡大) 皮膚 (強拡大) 滑膜(弱拡 大) 滑膜(強拡大) 滑膜(S-100) 滑膜(CD68) 

630: 左耳前部皮膚腫瘍の1例

京都大学医学部附属病院病理部(1)、島田市民病院臨床病理科(2)

橘 充弘1、2)、大石 直樹2)、橋本 裕美2)、塩見 達志1)、桜井 孝規1)、中嶋 安彬1)、真鍋 俊明1)

   投票結果

Warty dyskeratoma 4
Pemphigus foliaceus 2
Vulgaris    1
Actinic keratosis (Solar keratosis) 3
Transient acantholytic dermatosis 2
Acantholytic actinic keratosis    2
Acantholytic squamous cell carcinoma 1
Hailey-Hailey disease 1
Intraepidermal acantholytic vesicular dermatitis 1
Mollusum contagiosum    1
Organoid nevus    1
Squamous cell carcinoma    1

検討結果

Warty dyskeratoma
症例 70歳代、男性
経過 【主訴】左耳前部皮膚腫瘍
【現病歴】手術約7ヶ月前、左耳前部皮膚の腫瘍に気づいたが放置。その後、腫瘍は徐々に増大し、手術2ヶ月前に、A医院受診。4ミリトレパンにて皮膚生検 が施行された。その時の病理診断は「扁平上皮癌」であった。手術目的で、B病院形成外科に紹介受診。
臨床診断扁平上皮癌にて、前医の皮膚生検標本が提出され、再度、病理診断が行われた。経過中、右耳前部皮膚腫瘍も出現してきた。左と性状は同様であり、転 移・再発が疑われた。手術にて両側病変部が切除された。提出標本はその時の左耳前部皮膚腫瘍。
術後、病理診断にて左耳前部病変は断端陽性であったため、厳重に経過観察を行っているが、再発・転移巣は認めていない。
【肉眼所見】左耳前部皮膚腫瘍は4×3cm大の鱗屑を伴う平坦隆起性病変で、やや黒褐色調で、辺縁不整である。
【問題点】病理組織学的診断。(左耳前部皮膚腫瘍全摘出術標本)
写真 肉眼(左) 肉眼(右) 5倍(左) 40倍(左) 100倍(左)その1 100倍(左)その2 200倍(左) 

631:口腔内(硬口蓋)腫瘤の1例

独立行政法人国立病院機構 京都医療センター 研究検査科病理

寺島 剛、南口 早智子

投票結果

Malignant melanoma 8
  (Amelanotic melanomaを含む)
Inflammatory myofibroblastic tumor 3
Spindle cell carcinoma 3
Squamous cell carcinoma, spindle cell variant 2
Dedifferentiated sarcoma 1
Fibroma 1
Malignant tumor with sclerosis 1
Solitary fibrous tumor 1
Synovial sarcoma 1

検討結果

Mucosal (oral) malignant melanoma
症例 80歳代前半、女性
経過 【主訴】硬口蓋部腫脹、疼痛
【既往歴・家族歴】本疾患に関わる特記事項なし
【臨床経過】入院3ヵ月前頃より、左側硬口蓋部の疼痛・腫脹を自覚。入院1ヶ月前に当院歯科口腔外科紹介受診し、生検二回施行。 (配布HEスライド(1)or(2))
入院後、腫瘍切除術施行。(配布HEスライド(3))
【画像所見(入院1ヶ月前)】(web 画像) 左上顎根尖部に、上顎骨の骨吸収像を伴う径3.5cm大の比較的境界明瞭な腫瘤性病変を認める。
【切除検体肉眼所見】(web 画像) 硬口蓋部左側正中から歯牙根尖部にかけて、被膜形成のない境界比較的明瞭な白色充実性病変(径3cm大)を認める。内部は均一で、肉眼的に壊死は 目立たず、出血はfocal に生検痕程度であった。
【配布HEスライド(注)】 (1)初回粘膜生検、(2)二回目の粘膜下切除生検(上皮は含まず)、(3) 腫瘍単純切除術検体の代表割面。
【問題点】生検時の病理組織診断および鑑別診断、切除検体での病理組織診断。
(注)配布スライドについて:2回の生検とも小検体であったため、(1)(2)各30枚しか作製できておりません。各施設には(1)(2)のいずれか、お よび(3)のスライドを配布しております。ご了承ください。
写真 CT 肉眼 ミクロ1 ミクロ2 ミクロ3 ミクロ4 ミ クロ5 ミクロ6 ミクロ7 

632:前腕皮下腫瘍の1例

京都大学医学部附属病院病理部 

山本 鉄郎、塩見 達志、真鍋 俊明

投票結果

Fibrous histiocytoma 3
(Cutaneous fibrous histiocytoma含む)
Erythema induratum (Bazin) 2
Atypical fibroxanthoma 1
Erythema nodosum    1
Inflammatory myofibroblastic tumor 1
Mycobacterial spindle cell pseudotumor 1
Post-steroid panniculitis 1
Xanthogranuloma 1
外傷感染による 1

検討結果

Mycobacterial spindle cell pseudotumor
症例 50歳代後半、女性
経過 【既往歴】17年前よりSLE、間質性肺炎があり現在prednisolone 17mg/day内服中。また糖尿病もありinsulin治療中。
【現病歴】最近、左前腕外側皮下に3.0×1.0cm大の可動性良好、弾性硬の結節性病変が出現。臨床的にループス結節性ムチン沈着を疑い生検。
【組織所見】真皮から皮下組織内にかけて、主に紡錘形細胞が増生し、一部に組織球、多核巨細胞を混じた炎症細胞浸潤を伴い、全体として比較的境界明瞭な腫 瘤性病変を形成していた。
【問題点】病理学的診断
写真 ミクロ1 ミクロ2 ミクロ3 ミ クロ4 ミクロ5 ミクロ6 ミクロ7

633:不明熱の精査中に脾破裂をきたした若年女性の1例

天理よろづ相談所病院 医学研究所病理(1)、総合内科(2)、腹部一般外科(3) 

藤田 久美1)、本庄 原1)、弓場 吉哲1)、小橋 陽一郎1)、小谷 凡子2)、石丸 裕康2)、
吉村 玄浩3)

投票結果 

Allergic granulomatous angiitis 2
  (Allergic granulomatous angiitis & splenic peliosis )
Anti Phospholipid Syndrome 2
Adenocarcinoma 1
Budd-Chiari syndrome due to use of contraceptives 1
Churg-Strauss Syndrome 1
Cryoglobulinemia 1
Epithelioid hemangioma with eosinophilia 1
Fresh & organized thrombosis of spleen 1
Migratory phlebitis 1
Panarteriitis 1
Polyarteritis nodosa 1
Splenic infarction (Hypereosinophilic syndrome) 1
Thrombophlebitis with hypereosinophilic syndrome 1
Thrombotic disease, etiology undetermined 1
Thrombotic thrombocytopenic purpura 1
Protein C活性低下による 1

検討結果

Splenic rupture due to systemic thrombophlebitis with eosinophilia; compatible with hypereosinophilic syndrome
症例 20歳代前半、女性
経過 【主訴】発熱、頭痛、左下腹部および大腿の疼痛、左下肢異常感覚
【既往歴】特記事項なし
【現病歴】入院1ヶ月前より頭痛と発熱を自覚。1週間前に突然左下腹部痛出現、当院救急外来を受診しpelvic inflammatory diseaseの疑いにて抗生剤投与され、腹痛は一旦軽快した。しかし、夜間38-39℃の発熱は持続し後頸部痛も新たに出現したため、髄膜炎疑いにて髄 液検査施行されるも有意所見なし。入院当日の早朝より左腰部から左大腿前面にかけての疼痛と左下肢末梢のしびれ感が出現、精査目的にて入院となる。
【入院時現症】BP 121/65 mmHg、 PR 20 bpm、 RR 20 cpm、 意識清明、 心肺著変なし、 下腹部に圧痛あり、 左腰部から左大腿前面にかけて自発痛(+)、 把握痛(+)、 発赤腫脹(-)
Hb 10.3g/dl、 Plt 63000/μl、 WBC 16000/μl、 (N-seg 39.0%、 Eo 37.0%)、 CRP 1.9 mg/dl、 PT 13.2s (INR 1.45)、 aPTT 37.5s、 Fib 229mg/dl、 FDP 55μg/ml、 FDP D-dimer 31.0 μg/ml、 BUN 5.7 mg/dl、 Cr 0.8 mg/dl、 LDH 252 IU/l (基準値100-225IU/l)、 AST 21 IU/l、 ALT 25 IU/l、 CK 56 IU/l 、RF(-)、ハ ANA(-)、ハ PR3-ANCA(-)、ハ MPO-ANCA(-)、ハ 抗血小板抗体(-)、 Protein C活性 51% (基準値73-142%)、ハ Protein S活性73% (基準値60−150%)、 カルジオリピン抗体 (-)、ハ 抗Cl-β2GP1抗体 (-)、 HBs抗原 (-)、ハ HCV抗体 (-)、ハ HIV抗体 (-)、ハ EBV-VCA (IgG) (-)、ハ EBNA (-)
血液培養 好気・嫌気各3回施行しいずれも陰性
尿培養・便培養 いずれも有意菌検出せず
抗寄生虫抗体スクリーニング 10項目につき陰性
喀痰細胞診 class II、好酸球数0/200個 (0%)
尿所見 異常なし、 妊娠反応(-)  
心電図・胸部XP・腹部XP・左下肢XP いずれも異常所見なし。
心エコー 少量の心嚢水のほか異常所見なし。
腹部エコー・腹部CT 供覧
【入院後経過】第3病日トイレで失神発作をおこし転倒した。その後もvital signは安定していたが、徐々に左側腹部痛が増悪し、第6病日、突然SHOCKとなる。画像検査にて腹腔内出血および門脈左右枝から本幹・SMV本幹・ 脾静脈・右肝静脈内の多発血栓が認められ、脾破裂および同部からの出血が疑われたため、脾動脈塞栓術が施行され、翌日開腹手術となった。術中所見にて 5000mlの血性腹水および凝血塊(肝外側区域から胃の前面および左横隔膜下に特に多い)を認めた。他の臓器に著変を認めず、脾破裂に伴う腹腔内出血と して脾臓摘出術が施行された。
【肉眼所見】摘出された脾臓は大きさ16×10.5×5cm、重さ465g。縦軸方向の全長におよぶ被膜の開裂を認め、被膜下に血腫が認められた。
【問題点】 診断。特に、血栓形成の原因となった病態について
写真

634:稀な肺癌の1例

大阪府立呼吸器・アレルギー医療センター 臨床病理検査科(1)、呼吸器外科(2)

永野 輝明1)、岩崎 輝夫2)、桂 浩2)、田村 光信2)、中根 茂2)、中川 勝裕2)、
河原 邦光1)

投票結果

Adenocarcinoma 10
(Adenocarcinoma of lung with sarcomatoid features)
(Adenocarcinoma (BAC) & hemangioendothelioma (-like change))
(Adenocarcinoma of the lung with prominent blood vessel invasion)
(Adenocarcinoma, papillary type) (2)
(Bronchioalveolar adenocarcinoma producing thyroglobulin)
Pleomorphic carcinoma 3
Carcinosarcoma 3
Bronchioloalveolar carcinoma 1
Pulmonary blastoma 1
So-called sclerosing hemangioma (papillary pneumocytoma) 1

検討結果

Bronchioloalveolar carcinoma, or pleomorphic carcinoma
症例 60歳代前半、女性
経過 【症例】60歳代前半、女性
【既往歴】特記すべき事項無し
【現病歴】当院入院4ヶ月前より咳嗽及び軽度の喀痰が出現し、近医にて左胸水を指摘された。その後の他院での検査で、胸部CT上左肺S6の腫瘤性病変を指 摘され、胸水細胞診・気管支内視鏡が施行されたが悪性所見は得られなかった。肺癌の疑いにて当院紹介入院となり、左下葉切除術が施行された。
【検査所見】胸部CTで、左肺S6にspiculationと胸膜陥入を伴う径2.5cm結節影、また同S9・S10に径1cmの結節影あり。Gaシンチ (前医):異常集積なし。
血液・生化学検査は異常なし。腫瘍マーカー(術前):CEA 4.2ng/ml、CYFRA 1.7、NSE9.0、 (術後20日):CA19-9 <0.6U/ml、CA15-3 3.8(正常<27)、CA125 141(<35)、Thyroglobulin 95.1ng/ml(<30)。
【問題点】病理組織診断(手術標本を供覧します)
写真

635:左胸壁腫瘍の1例

奈良県立医科大学病理診断学講座

笠井 孝彦、武田 麻衣子、榎本 泰典、田村 智美、中峯 寛和、野々村 昭孝

投票結果

Rosai Dorfman disease 10
(内、Extranodal Rosai Dorfman disease 2)
Inflammatory pseudotumor 3
Granular cell tumor 2
Angiomyolipoma 1
Inflammatory myofibroblastic tumor 1
Langerhans cell histiocytosis 1
Liposarcoma 1
Lymphohistiocytoid mesothelioma 1

検討結果

Rosai-Dorfman disease of the pleura
症例 50歳代、男性
経過 【主訴】両側季肋部痛
【臨床診断】左胸壁腫瘍
【既往歴】1年前より高血圧と胃十二指腸潰瘍
 嗜好品:酒;ビール1000ml(35年)、タバコ;15本/日(35年)
【家族歴】特記事項なし
【現病歴】2ヶ月前より吸気時の両側季肋部痛が出現し、1ヶ月前より発熱と呼吸困難も出現した。近医にて炎症反応(WBC12400、 CRP 5. 6)や胆道系酵素上昇(ALP422、 γ-GTP 142)と胸部CT上左胸壁に6cm 大の腫瘤が認められ、抗生剤投与が行われるも改善しなかった。腫瘍の可能性もあり当院心臓血管呼吸器外科にて入院となり摘出術が施行された。
入院時検査成績:CRP 7.3mg/dL、 WBC 8500/μL、 RBC382x104/μL、 Ht 35.5%、 Hb 11.9g/dL、 Plt 64.0x 104/μL、 GOT 50IU/L、 GPT 90IU/L、 BUN 15mg/dL、 Cr 0.9mg/dL、 LDH 151 IU/L、 ALP 586 IU/L、γ-GTP 163 IU/L、 CEA 23.1ng/dL
【肉眼所見】左第6〜第9肋骨を巻き込む85×56×57mm大の胸壁腫瘍
【問題点】病理組織診断
写真 マクロ ミ クロ1 ミクロ2 ミクロ(S-100) 

636:巨大腎腫瘍の1例

和歌山県立医科大学病理学第二(1)、同臨床検査医学(2)、同泌尿器科学(3) 

中村 靖司1) 、安岡 弘直1) 、森 一郎2) 、倉本 朋未3) 、尾崎 敬2) 、上門 康成3) 、新家 俊明3) 、覚道 健一1)

投票結果 

Mixed epithelial and stromal tumor 8
Mesoblastic nephroma 2
Metanephric adenofibroma 2
Adult mesoblastic nephroma 2
Cystic hamartoma of kidney 1
Leiomyoma 1
Metanephric hamartoma 1
Multilocular cystic nephroma 1
Phyllodes tumor of the renal pelvis 1
Pseudosarcomatous fibromyxoid tumor 1

検討結果

Mixed epithelial and stromal tumor of kidney
症例 50歳代、女性
経過 【既往歴】帝王切開(26年前)、シェーグレン症候群(発症時期不詳、ステロイ ド2。5mg内服中)、子宮筋腫(5年前)
【現病歴】二ヶ月前受診の人間ドックの腹部超音波検査にて右腎の9cm大の腫瘍を指摘された。同時期より、腰痛、全身倦怠感を自覚した。精査目的にて、本 院紹介受診。
【入院時検体検査】尿潜血なし、他特記すべきことなし。
【画像所見】レボビストエコー:右腎に10.0×6.4cm大の腫瘍が認められ、腫瘍内に5cm大の多房性病変あり。腫瘍実質には腎盂上皮の名残と考えら れる膜状の高エコー構造あり。パワードップラーでは、乏血性、造影エコーでは、淡いが腫瘍実質全体が造影され、腫瘍内に屈曲蛇行する新生血管をみる。後期 相は欠損像。腎盂内に腫瘍浸潤様像をみる。
腹部CT:右腎に9.3×6.3cm大の腫瘤を認め、内部は不均一に淡く造影され、嚢腫状変化を伴う。IVC浸潤を否定できない像をみる。肝に径 1.0cm大の嚢胞性病変もみられる。
ハMR angiography:右腎下極に8.5cm大の嚢胞成分を混ずる内部充実性の腫瘤を認める。右腎静脈内腫瘍血栓は否定される。肝内嚢胞、血管腫をみ る。
【手術所見】右腎下極を主に、9.0cm大の白色充実性の腫瘍がみられ、5.0cm大の黄色透明な内容液を含む嚢胞を伴う。(根治的右腎摘出術)
標本:摘出腎腫瘍部
写真 マクロ1 マクロ2 ミクロ1 ミクロ2 ミクロ3 ミクロ4 ミクロ5