結合組織型マスト細胞のTh1反応に対する関与
大阪府立成人病センター病理・細胞診断科
大阪大学大学院医学系研究科病理病態学講座(旧病理学講座)
片岡 竜貴
マスト細胞は血液幹細胞に由来する免疫細胞の一つである。マスト細胞は大きく2種類に分けて考えられる。1つは消化管粘膜面や肺胞上皮に存在する粘膜型マ
スト細胞であり、もう1つは結合組織に主に存在する結合組織型マスト細胞である。マウスについては、脾臓や骨髄の有核細胞をIL-3依存性に培養すること
で粘膜型マスト細胞が得られ、SCF/Kit ligand依存性に培養することで結合組織型マスト細胞が得られることが知られている。
我々は、転写因子Stat4が、粘膜型マスト細胞では発現しないが、結合組織型マスト細胞で発現することを見いだした。また、このStat4の発現は、別
の転写因子Stat6やMITFの制御を受けることが明らかになった。
Stat4は、T細胞やNK細胞において、腫瘍免疫を含むTh1型免疫反応を担う分子の発現に関与することが知られている。我々は、マスト細胞でも、
Stat4がIFNγやNOS2といった細胞性免疫に重要な分子を発現させることを示した。マスト細胞は腫瘍細胞株に対する細胞障害活性を示すことが知ら
れているが、Stat4を欠損するマスト細胞ではその活性が有意に低下することがわかった。
臨床的な腫瘍検体でのマスト細胞の浸潤と予後の関係については相反する報告が存在する。Stat4の発現の有無を調べることで、腫瘍に浸潤しているマスト
細胞の意義がより明確になると考えられる。