骨・軟部腫瘍の診断における Positron Emission Tomography (PET) の有用性と問題点


大阪大学大学院医学系研究科 整形外科/核医学
濱田 健一郎 


骨軟部腫瘍画像診断の目的は、病変の存在の有無(detection)、部位と局在(localization)、質的診断 (characterization)である。これまでの画像診断は質的診断、すなわち良性か悪性か、また、どのような組織型かを判断することにおいて十 分なものとは言えなかった。近年、実用化されたFDGを用いたポジトロン断層法(Positron emission tomography; PET)による機能画像診断は、上に述べた画像診断の欠点を補うものとして期待されている。
FDP-PETの原理について簡単に説明する。FDGはGlucose同様、細胞膜上に存在するグルコース輸送体Glucose transporter (Glut)により、細胞質内に取り込まれ、グルコースリン酸化酵素であるHexokinase(HK)によりリン酸化されFDG-6-リン酸となる。 FDG-6-リン酸は、そこから先の解糖系に進むことは無く、また脱リン酸化もされず細胞内に蓄積される。悪性腫瘍においては、非腫瘍性細胞に比べ、著明 に嫌気性糖代謝が亢進しており、Glut、HKともに活性化しているので、FDG-6-リン酸の細胞内蓄積が強く認められるのである。
現在、様々な悪性、またはその疑いの疾患において、FDP-PETによる診断が行われているが、一方、炎症細胞が浸潤した領域などは、悪性病変の有無にか かわらず集積を認め疑陽性を呈する場合もある。
本講演においては、FDP-PETが有効であった例、またfalse-positive、false-negativeであった例を示し、FDP-PET の有用性とその限界について説明する。さらに、骨軟部腫瘍において実際の糖代謝関連因子発現との関連も検討したのでこれについても報告する。
FDP-PETを用いた画像診断は今後ますます一般化すると考えられる。PETの原理を理解すること、その有用性と限界を知っておくことは、正確な病理診 断を行ううえでも重要なことであると考える。