軟部腫瘍


大阪大学大学院医学系研究科・病態病理
冨田 裕彦


軟部腫瘍のなかで、粘液性の疾患と神経性の疾患は良悪を含めて、鑑別が困難な場合が多い。今回はそのような症例の提示を行い、疾患鑑別のプロセスを紹介し たい。
 粘液性、あるいは粘液線維性の部分を主体とする軟部腫瘍には、次のような疾患が含まれる。
良性―Myxoma
良悪境界―Desmoid、Fibromatosis
悪性―Myxofibrosarcoma、(Low grade)fibromyxoid sarcoma、Myxoid liposarcoma、Myxoid chondrosarcoma
 Myxofibrosarcomaは、しばらく前まで(あるいは今も)Myxoid malignant fibrous histiocytoma (MFH)と呼ばれていた疾患であり、主として、粘液性の基質の中に、線維芽細胞様の未分化な腫瘍細胞が増生しているものである。一方、 Fibromyxoid sarcoma(Evans tumorとも呼ばれる。)は主として線維性の基質の中に、線維芽細胞様の細胞の増生を認める腫瘍であり、Evansが組織像からは良性と思える線維性の 腫瘍において肺転移が生じたことを報告してから注目されるようになった。
末梢神経性腫瘍においては、良性疾患のうち、Schwannomaは悪性化する率が極めて低いことが知られている。Neurofibromaにおいては、 小さな神経あるいは皮膚に散発性に出現するものは悪性化の頻度は低いが、NF1の異常と関係するPlexiform neurofibroma(蔓状神経線維腫)、あるいは大きな神経由来のNeurofibromaはしばしば悪性化することが知られている。こういった場 合、何度も再発を繰り返しながら、組織像がどんどん悪性変化、即ち細胞密度の増加、分裂像の増加、壊死領域の出現等、を示すようになる。 Neurofibromaの良悪の判定、すなわち、どこから、MPNSTと判断するかは、しばしば困難である。
本項では、免疫染色も交えて、粘液性腫瘍、神経系腫瘍の良悪判定、診断方法について解説したい。