大学病院における医療事故の防止に向けて

文部大臣緊急談話


 近時、大学病院において重大な医療事故が引き続いていることは、誠に遺憾であります。

 まずもって、事故に遭われた患者さん、ご家族の方々に心よりお詫び申し上げたいと思います。特に、お亡くなりになられた患者さんには、衷心よりご冥福をお祈り申し上げます。

 大学病院は、高度医療を担う医療機関であるとともに、次代の医師の養成機関として、その責務を十全に果たすことを通じて、国民の方々のご期待に応えなければならないところであります。

 しカし、残念なことに、一連の事故は、初歩的なミスに起因すると認められるものが多く、まず、大学病院に従事する医療人の皆さんに、事故防止に向けた安全意識の徹底を訴えたい。患者さんの立場に立ち、患者さんの安全が確保されて初めて医療が成り立つものであることを、日々意識を新たにし、患者さんに向き合っていたださたい。そして、医師を中心として、各医療専門職の連携のもと、患者さんに対する責任体制の明確化を図り、日々、お互いに啓発し合いながら、患者さんに対して万全の医療を尽くせるよう、今一度、医療体制を見つめ直していただきたい。さらに、医学教育の場においても、倫理や安全管理に対する教育をより重要視していくことも肝要と考えます。

 一方で、全医療人が司々の職務を全うしつつ、連携よくチーム医療に万全を尽くしたとしても、人間は万能ではありません。

 殊に、大学病院は、学生の実習の場であり、医療人の研修の場としての責務を果たすことが求められていることなどから、大学病院固有の事故防止のためのシステムを確立する事も喫緊の課題と認識いたしております。

 これまで、事故を未然に防ぐための報告システムの導入、患者さんを間違えないための確認手続きの強化、医薬品の形状の改善などの取り組みが進められているところでありますが、大学病院の特性に留意しながら、各大学病院が相協力して、より一層、大学病院に効果的なチェツクシステムを多角的に築き、共有していたださたいと思います。

 また、システムの確立には、外部の専門的視点を導入することが有効であり、大学病院間での相互チェックを推進することも、このための効果的な方法の一つであると考えます。 なお、各大学の協力を得て取りまとめた医療事故防止のための調査によって、安全管理に対する医療人の意識面の問題点や、研修医に対する指導など医療体制の在り方に関する問題点が浮かび上がっていますので、各大学における医療人の安全意識及び事故防止システムの確率に当たって、十分御活用いただきたいと存じます。

 以上、各大学病院においては、病院長がリーダーシップを発揮され、医療事故の防止に向けて、医療従事者の安全意識の徹底、多面的なチェックシステムの確立に、引き続き努力を積み上げていただき、患者さんに対する万全の医療の提供を通して、大学病院の医療に対する信頼の回復に努めるよう、お願いいたします。


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