胸膜悪性中皮腫の病理組織像


大阪府立呼吸器・アレルギー医療センター 河原 邦光

 びまん性悪性中皮腫(Diffuse malignant mesothelioma、以下DMM)はAFIPのAtlas of Tumor Pathology(Battifora H, McCaughey WTE. Tumors of the Serosal Membranes, 1995)では以下の4つの主要組織型と8つの頻度の低い亜型に分類され、多彩な組織型が示されてきた。

Main histological categories:
上皮型   epithelial
肉腫型   sarcomatous
二相型   biphasic (mixed)
低分化型 poorly differentiated (undifferentiated)
Unusual variants:
Desmoplastic mesothelioma
Lymphoplasmacytoid mesothelioma
Small cell mesothelioma
Mesothelioma in situ
Well-differentiaed papillary mesothelioma
Malignant mesothelioma of tunica vaginalis
Localized mesothelioma
Deciduoid peritoneal mesothelioma

 このようにDMMの多くを占める胸膜悪性中皮腫(Pleural malignant mesothelioma、以下PMM)では多彩な組織像を呈する。またその組織像は特異的な細胞組織学的なパターンを示すものもあるものの、他の腺癌・ 肉腫と類似像を示す症例がかなり存在する。このためPMMの病理組織診断は難しく、 鑑別診断のため組織化学的、免疫組織化学的、電子顕微鏡的検索がしばしば必要である。現在、多くの病理検査室ではPMMの診断に際して免疫組織化学を併用 しているが、いかなる一次抗体が最も有効であるかについての的確な報告は少ないため病理医は一次抗体の選択と染色結果の解釈に戸惑う場合が多い。今回当セ ンターの34例のPMMをretrospectiveに検討した結果をふまえて組織像と免疫組織化学を中心に話し、診断上のpitfallと思われる数症 例について提示する。