特発性間質性肺炎(IIPs)のATS / ERS国際分類(2002)とその使用について
国立病院機構近畿中央胸部疾患センター病理検査室 北市 正則
<1> 肺線維化病変の機序
肺の線維化病変には幾つかの機序があることが指摘されてきた。
炎症性病変の周囲病変・遺残病変としての線維化:肺炎後の器質化、肺膿瘍の周囲など
肉芽腫性病変に伴う線維化病変:結核症、サルコイドーシスなど
無気肺硬化:apical cap fibrosis, 胸膜あるいは気道病変からの肺胞領域への圧排など
間質性線維化病変:肺胞壁の構成成分に基本的な病変があるための線維化病変
これらのうち間質性肺線維化病変は特発性間質性肺炎、膠原病性間質性肺疾患などの臨床状況で観察される。
<2> 特発性間質性肺炎(IIPs)のATS / ERS国際分類 (2002)
特発性間質性肺炎(IIPs)の病理組織学的パターンについてATS/ERS国際分類(2002)と日本呼吸器学会(2004)では相対的頻度の高い順に
以下の7種類を取り上げた。
Usual interstitial pneumonia (UIP)
pattern
通常型間質性肺炎(UIP)パターン
Nonspecific interstitial pneumonia (NSIP) pattern
非特異性間質性肺炎(NSIP)パターン
Organizing pneumonia (OP)
pattern
器質化肺炎(OP)パターン
Diffuse alveolar damage (DAD)
pattern
びまん性肺胞傷害(DAD)パターン
Respiratory bronchiolitis (RB)
pattern
呼吸細気管支炎(RB)パターン
Desquamative interstitial pneumonia (DIP) pattern
剥離性間質性肺炎(DIP)パターン
Lymphocytic interstitial pneumonia (LIP) pattern
リンパ球性間質性肺炎(DIP)パターン
肺組織の病理組織学的所見を把握してこれらのパターン分類を行い臨床所見と画像所見との整合性を検討することが病理診断の作業になる。
<3> 間質性肺炎の病型診断作業について
臨床所見と画像所見の適切な要約に基づいて肺生検部位の選択が行われる。外科的肺生検が行われた検体については生検肺標本の大きさの計測、肺胞含気率
(alveolar aeration ratio = AAR)、正常肺胞壁率(normal alveolar wall ratio =
NAWR)、リンパ濾胞の対物2倍の1視野での個数と最大径の計測と胚中心形成の有無の記載、線維化病変で囲まれた蜂巣肺形成の有無と最大径の計測、線維
化病変内での平滑筋増生の程度(score 0-3)、線維化病変内での線維芽細胞巣(fibroblastic focus =
FF)の対物4倍の1視野での個数、線維化病変内での気腔内の肉芽組織(granulation tissue =
GT)の対物4倍の1視野での個数、肺胞構造の消失を伴う線維化病変から正常肺胞壁に至る変化が1-3肺胞壁で起こる急峻な変化(abrupt
change)を示す部位数の記載を行う。このような観察方法によってUIP vs. NSIP, NSIP vs. DIP, OP vs.
DADなど外科的肺生検の対象となることが多い間質性肺炎の病型診断が再現性をもって行えるようになってきた。
<4> 最近の間質性肺疾患・間質性肺炎の病理診断について
間質性肺炎の外科的肺生検の病理診断では<2>の病型診断を<3>の方法で行うことによりdiscordant
UIP, UIP with relatively low score of FF, UIP with NSIP-like
lesion, UIP with alveolar capillaritis, NSIP with desquamative
featureなどの症例を認識するに至っている。“臨床画像病理相関(C-R-P
correlation)”と臨床的有用性を意識して自験例を呈示したい。