卵巣境界悪性類内膜, ブレンナーおよび明細胞腫瘍
愛仁会千船病院臨床病理科 名方保夫
卵巣境界悪性表層上皮性間質性腫瘍は、漿液性および粘液性腫瘍の発生頻度が高く、今回とりあげる類内膜、ブレンナーおよび明細胞腫瘍はまれである。ただ
しその組織診断基準に関しては、境界悪性表層上皮性間質性腫瘍5型で共通である。すなわち、@上皮細胞の多層化、A腫瘍細胞集団の内腔への分離増殖、B同
一細胞型における良性と悪性の中間的な核分裂活性と核異型、C(破壊性)間質浸潤の欠如である。さらにWHO分類では、径3mmあるいは10mm平方に満
たない浸潤巣を、その数に無関係に微小浸潤巣と規定し、境界悪性腫瘍のなかに含めている。
卵巣境界悪性表層上皮性間質性腫瘍には、同義組織用語として、低悪性度、増殖性、異型増殖性が挙げられるが、ブレンナー腫瘍(増殖性ブレンナー腫瘍)を除
き、境界悪性あるいは低悪性度が一般的である。
A. 境界悪性類内膜腫瘍
- 上皮性成分は子宮内膜腺上皮に類似(類内膜)し、ときに扁平上皮化生を認めることがある。核の異型性は軽度のものから上皮内腺癌と考えられる
ものまで存在するが、破壊性間質浸潤の欠如が特徴である。
- 肉眼的には2型が存在し、1型は(嚢胞)線維腺腫型、他型はチョコレート嚢胞内に増殖する型である。
- 大部分の症例で子宮内膜症あるいはチョコレート嚢胞を併存する。
- 全卵巣腫瘍中の約20%が類内膜腫瘍であるが、そのほとんどは類内膜腺癌である。境界悪性類内膜腫瘍はまれであるが、悪性に付随して境界悪性
の部分が存在することもある。
B. 境界悪性ブレンナー腫瘍(増殖性ブレンナー腫瘍)
- 異型移行上皮(尿路上皮)性腫瘍細胞(G1〜3相当)の増殖より構成される腫瘍で、間質への破壊浸潤は欠如する。
- 肉眼的には嚢胞腔内に乳頭状またはポリープ状に発育する部分を有する嚢胞性腫瘍である。
- 腫瘍細胞のなかには、粘液を有する円柱上皮性成分また扁平上皮成分を認めることもある。
C. 境界悪性明細胞腫瘍
- Hobnail状の上皮性細胞が腺腔構造や小嚢胞を形成し、1〜数層の配列を示すが、間質への破壊浸潤像は認められない。
- 肉眼的に大型の嚢胞型と充実型(微小な多嚢胞型)とに分類される。
- 子宮内膜症やチョコレート嚢胞に伴う場合がある。
- 卵巣明細胞腫瘍は大部分が明細胞腺癌であり、境界悪性腫瘍の発生頻度はきわめてまれである。