643:心臓腫瘍の1例

大阪大学病態病理(1)、河内総合病院心臓血管外科(2)

飯塚徳重1)、森井英一1)、星田義彦1)、冨田裕彦1)、中道伊津子1)、

山口高広2)、小林靖彦2)、阪越信雄2)、青笹克之1)


【症例】 60歳代後半、男性
【主訴】 心エコー上の異常陰影
【既往歴・家族歴】特記すべきことなし

【現病歴】3ヶ月前に呼吸苦出現し、近医に緊急入院した。心エコーにて心嚢液の著明な貯留と左房内腫瘍を認めた。心タンポナーゼを解除するために循環器内 科を紹介受診した。心嚢液のドレナージを施行し、症状は改善した。甲状腺機能低下による心嚢液貯留と診断し、チラージンの内服治療を開始した。甲状腺機能 は安定した。その後の心エコー検査において僧帽弁に付着する腫瘍を認めたため、後尖の一部とともに切除し、僧帽弁形成術を施行した。

【血液検査所見】WBC 4330 /μl、RBC 243万/μl、Hb 9.2g/dl、Ht 27.7%、Plt 19.1万/μl、GOT 10 IU/L、GPT 4 IU/L、T.Bil 0.6 mg/dl、BUN 12.8 mg/dl、Cr 0.58 mg/dl、FT3 1.08 pg/ml、FT4 2.52 pg/ml、TSH 10.54μU/ml

【病理組織所見】僧帽弁に連続し、細い樹枝状構造を呈する短有茎性腫瘍である。樹枝状の部位と茎の部位は線維芽細胞を散見する淡い膠原線維からなり、表層 は一層の扁平な内皮細胞により覆われている。

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