646:子宮体部肉腫の一例

神戸大学外科病理学(1)、神戸市立中央市民病院臨床病理科(2)、同産婦人科(3)

岩水幸子1)、今井幸弘2)、白根博文2)、小島謙二3)、横崎 宏1)


【症例】 60歳代、女性
【家族歴】不明
【既往歴】脳梗塞

【現病歴】脳梗塞で他院を受診し入院した際にMRIで腹部腫瘤を指摘された。脳梗塞の既往があるため術後の集中管理が必要であることと、ご家族のご都合に より当院に紹介された。

【入院後経過】MRIでは、子宮の筋層に長径12pでT1 highの比較的辺縁明瞭なmassを認め、一部にcysticな変化を伴っていた。CTでは、下腹部ほぼ正中に10p強のtumorを認め、内部には water densityに近い部とモロモロとした構造物を認めたが、脂肪成分は認めなかった。リンパ節腫大は認めなかった。変性したleiomyoma、左卵巣腫 瘍の子宮浸潤を疑い、腹式子宮全摘術、両側付属器摘出術を行った。術中迅速診断では、核異型が著明で、核分裂像の目立つ腫瘍組織が子宮筋層に浸潤しており leimyosarcomaを疑った。
摘出した子宮には体部筋層内に、径10pの嚢胞状の出血巣と長径3pの不整形壁在結節を認めた。割面は淡褐色均一で、辺縁は不整であったが、指を伸ばすよ うな浸潤傾向は目立たなかった。組織学的には、大きな核、核小体と明るい大きめの胞体を持つ腫瘍細胞が周囲の筋層との間に明瞭な境界を持たずに浸潤してい た。核分裂像は高倍率10視野辺り14であった。子宮筋層を越えた浸潤は認めなかった。腫瘍細胞の多くはSMA(+), desmin(-), estrogen receptor(-), CD34(-), Factor VIII(-), S-100蛋白(-), cytokeratin(-)を示し、一部の腫瘍細胞にEMA(+)を示した。
 術後約2ヶ月で、転移再発を示唆する所見を認めていない。
 診断に苦慮したので、諸先生方のご意見をお聞かせいただきたく症例を提示する。