648:ある原疾患が隠された大動脈弁狭窄症,胸部大動脈瘤の1例.

公立豊岡病院臨床病理科(1)、関西医科大学第一病理学(2)

酒井 康裕1)、足立 靖2)、保坂 直樹2)、池原 進2)


【症例】 60歳代,女性.
【主訴】 立ちくらみ,意識消失,胸部不快感.
【既往歴】 7年前〜心疾患,膝関節・腰背部痛で近医フォロー中.4ヶ月前両側白内障手術.
【アレルギー】卵,牛乳.
【生活歴】 アルコール,喫煙歴なし.
【家族歴】 母:高血圧

【現病歴】 5ヶ月前から月に1〜2回坂道などで立ちくらみが出現し休憩で軽快していたが,当日は周りから暗くなるような感じがし意識を失った.発見者の通報により, 当院救急センターに搬送された.大動脈弁狭窄症及び胸部大動脈瘤に対し,大動脈弁置換術及び上行弓部人工血管置換術が施行された.

【来院時現症】 血圧80-90/40〜50mmHg.脈拍数80/分・不整(心房細動).駆出性収縮期心雑音.搬入時意識回復.

【検査所見】 詳細は当日供覧.胸部X線写真:縦隔影拡大.心エコー:高度大動脈弁狭窄症,左鎖骨下動脈狭窄.心臓カテーテル検査:上行大動脈に大動脈瘤,冠動脈異常な し.
【手術所見】 当日供覧.

【組織学的所見】 動脈壁全層あるいは弁に砂粒状の褐色沈着物が認められる.硝子化や石灰化,肉芽の形成,壊死,ごく少数のリンパ球・形質細胞浸潤を伴うが,コレステリン 結晶の沈着やマクロファージの集簇は指摘できない.EVG染色では硝子化部分は弾性線維が消失あるいは粗ぞう化している.

【配布標本】 @大動脈壁,A大動脈弁
【問題点】
1.    動脈壁や弁への砂粒状褐色沈着物を見た時の鑑別診断や詰めの方法は?
2.    本症例は粥状硬化とどう異なるのか?
3.    胸部大動脈瘤は大動脈狭窄症(二尖弁)に伴う血行動態的負荷に血管壁の脆弱性があると考えてよいか?