子宮頚部病変とHPV

関西労災病院 

棟方 哲



 Human papilloma virus (HPV)はカプシドが正20面体構造を有する約8 kbの2本鎖DNAウイルスであり、肛門・性器や手足などの上皮に感染する。100種類以上のHPVが知られているが、その1/3ほどが性器の上皮に感染 し、一部は子宮頸癌の発生に関与することが知られている。このhigh risk typeには、HPV-16, HPV-18, HPV-31, HPV-33, HPV-45などが含まれ、疣贅を引き起こすlow risk typeにはHPV-6やHPV-11が含まれる。HPVのゲノムには平均8個のopen reading frameがあり、これらのうちhigh risk typeのE6, E7蛋白は感染した上皮細胞の不死化や癌化に関与すると言われている。HPVの検出には、Southern blot法、Dot blot法、PCR法、米国FDAで承認されているHybrid Capture 2 (HC2)などがある。世界的にHPVの感染率は平均で10-15%と報告されており、high risk typeではHPV-16の頻度が最も高い。日本でも10代後半から20代前半女性で高頻度にhigh risk type HPVが検出されたという報告があり、今後の子宮頚癌検診のあり方が問われる。HPV DNA testは高い感度を有し、細胞診は高い特異度を有するため、これらを組み合わせることは子宮頚癌検診の観点から有意義であろう。近年、HPVに対するワ クチンが開発され、すでに臨床試験が行われつつある。これらによって、近い将来、HPV感染による子宮頚癌の発生が予防されることが期待される。