小児のEBウイルス感染症(慢性EBウイルス感染症と関連疾患)
大阪府立母子保健総合医療センター
桑江優子、浜名圭子、竹下泰史、岡村隆行、河敬世、中山雅弘
慢性EBウイルス感染症 (以下CAEBV)
は明らかな免疫不全症の見られない宿主に伝染性単核症様の症状が遷延もしくは再燃を繰り返す疾患であり、その本体はEBウイルスに感染したT細胞または
NK細胞のリンパ増殖症であると考えられている。本症の経過中に血球貪食性リンパ組織球症やT/NK細胞性リンパ腫、蚊刺過敏症などを合併することなどが
知られている。小児科領域で遭遇することが多いが、成人でも見られる。確定診断は血清学的、ウイルス学的に行われることが多い。臨床症状は多彩で、発熱、
肝機能障害、肝不全、脾腫、リンパ節腫大、血球減少、血球貪食、皮疹、基底核石灰化、間質性肺炎、肺高血圧症、心筋炎、冠動脈瘤などが報告されているが、
日常の生検組織診断で確認することができる病変は多くはない。典型的なCAEBVと考えられる1例と、EBV関連T/NKリンパ増殖症に合併した血球貪食
症候群と考えられる1例の臨床経過と病理組織像を呈示する。
症例1:
20歳代 女性。9歳時に発熱、肝機能異常を契機にCAEBVと診断される。PSL、IFN、IL-2などにより緩解に至ったが、黄疸、腹水、脾腫にて
再発。治療への反応悪く13歳時に脾摘施行。脾臓内のNK細胞へのEBVのモノクローナルな感染が確認された。脾摘が著効し以後10年間はIL-2で緩解
維持されていた。IL-2中止後5年以上再燃なかったが20歳代後半に無症状ながらEBV-DNAが著明に増加し、血中NK細胞の著明な増加を示したた
め、本年臍帯血移植を施行した。
症例2:
10歳代後半 男性。12歳時より発熱、血小板減少、肝機能障害あり。13歳時血球貪食症候群(HPS)と診断。その後HPSを再燃し、17歳時、上記
コントロールのため当センター紹介、入院。全血EBV 2x103/ml、CD2陽性分画でEBV-DNA陽性のためEBV関連T/NK-LPDに合併し
たHPSと考えた。腹部CTにて肝脾腫あり脾臓にlow
density areaの多発がみられた。PSL、VP16、CHOPを施行し緩解に至った。18歳時両側頸部リンパ節腫張を認め、以後増大。また肺野
に多発性小陰影が出現。このとき血中EBV-DNA(-)。頸部リンパ節生検施行。CHOP3コースを施行しリンパ節腫脹は消失。3ヶ月後よりhigh
dose
CAを開始したが、発熱、リンパ球減少、巨大脾腫が出現した。脾臓摘出術を施行したが、肝機能異常、腎機能異常が進行し、腎不全、肝不全にて約1ヶ月の経
過で死亡した。