655:腎腫瘍の1例
大津市民病院 病理科
益澤尚子 岸本光夫
【症例】70歳代後半 男性
【主訴】 腎腫瘤の精査加療を希望
【既往歴・家族歴】特記すべきことなし
【現病歴】
高血圧症で近医に通院中、腹部超音波検査で、径10 cm超の左腎腫瘤を発見された。
【初診時所見】
左腹部に軽度の膨隆を認める。
【画像所見】
腹部CTで左腎下半に15×13×11
cmのhetero/irregularな造影効果のある腫瘤を認める。腫瘤はMRIでT1 high-、T2 iso-intensity
を示すsolid lesion とT1 iso-、T2 high-intensity を示すcystic lesion を含んでいる。
【手術】
術前診断は腎癌 (cT2N0M0, papillary>clear cell?)で、transperitoneal radical nephrectomyが施行された。
【手術摘出標本】
大きさ15×11×10 cmの巨大な腫瘤(1,690 g)で、肉眼的には境界明瞭、灰白色〜黄色調である。一部に浮腫・出血・貯留嚢胞を認める。
【組織学的所見】
腫瘍は明らかな被膜を有しておらず、腫瘍結節周囲には萎縮性の尿細管や腎実質が観察される。腫瘍は密〜疎に分布する大小の管状構造を示しており、腫瘍細胞
は主に大型・好酸性の細胞であるが、やや小型で淡明または泡沫状の胞体を有する細胞も混在している。好酸性細胞は管状構造の内腔へ偽乳頭状に増殖してい
る。核異型は好酸性細胞・淡明細胞とも軽度から中等度である。腫瘍腺管の間には細い血管線維性間質をみる部分が多いが、浮腫の著明な間質も一部で認められ
る。腫瘍内に出血やヘモジデリン沈着も認める。腫瘍内に非腫瘍性の尿細管が混在している部分がある。電顕で好酸性細胞に多数のミトコンドリアが観察され
る。
【問題点】病理診断(組織診断および良悪性)
【画像】マクロ1 マクロ2 ミクロ1 ミクロ2 ミクロ3 ミクロ4