日本病理学会近畿支部第34回学術集会 検討症例





656:μ鎖病に合併した乳腺悪性リンパ腫の1例

神戸市立中央市民病院 病理部(1)、免疫血液内科(2)
今井 幸弘1)、白根 博文1)、森 美奈子2)

【症例】50歳代、女性
【現病歴】
5年前 人間ドックで貧血と脾腫を指摘され、3年前血小板減少も認められ当院へ紹介された。μ鎖病の診断でフルダラビンによる治療開始され、その後エンドキサンに変更し経過順調であった。今回、右乳房に腫瘤出現。乳房針生検ののち腫瘍摘出術施行(送付標本)。
術後は、骨髄腫の治療に準じてアルケラン(25mg)+mPSL(40mg)の治療開始され、血中M蛋白消失するも、1年半後に同様の組織像の皮膚腫瘤出現。治療継続中である。
【病理組織学的所見】
大型の核を有する異型リンパ球密な浸潤を多結節状に認めた。
【問題点】
μ鎖病の部分像と考えるのか、Diffuse large B cell lymphoma と考えるのか。


【結論】μ chain disease


657:髄膜腫瘍の1例

大阪赤十字病院 病理科(1)、脳神経外科(2)
新宅 雅幸1)、新田 武弘2)

【症例】70歳代前半、男性
【主訴】ふらつき
【既往歴】糖尿病、高血圧
【現病歴】
外出先で店頭の商品を眺めていたとき、急に後ろに倒れるように座り込み、当病院へ救急搬送された。10ヶ月前、1ヶ月前にも同様の発作があった。意識は清 明で理学的所見にも異常はなかったが、CT、MRI で右側頭葉先端部に径約3cmの腫瘤を認めたため入院となった。腫瘤は extra-axial で、周囲脳組織の強い浮腫を伴っており、middle meningeal artery により栄養されていた。髄膜腫の診断で開頭術を施行。腫瘍は蝶形骨稜の髄膜から発生しており、灰白色、軟であった。術後経過は良好。
(配布標本は摘出腫瘍)  

ミクロ1 ミクロ2 ミクロ3

【結論】Secretory meningioma

658:卵巣腫瘍の1例

滋賀医科大学付属病院病理部(1)、同検査部(2)
松原亜季子1)、九嶋亮治1)、石田光明2)、小島史好2)、岡部英俊2)

【症例】50歳代後半、女性
【主訴】下腹部痛
【既往歴】
20歳代に2回、帝王切開の既往あり
【現病歴】
下腹部痛が出現し、A病院救急を受診。CTにて骨盤内腫瘍を指摘されて婦人科疾患を疑われ、同日B病院紹介受診、超音波にて一部充実性部分を含んだ嚢胞性卵巣腫瘍を指摘されて即入院となった。
【入院時検査所見】
白血球:11200(好中球分画 84.9%)、CRP:20.14 mg/dl、LDH:1783 IU/l
腫瘍マーカー(カッコ内は基準値)CEA:2.2ng/ml(0-5)、CA19-9:456.4 U/ml(0-42)、SLX:64 U/ml (0-38)、CA125:57.7 U/ml (0-35)、SCC:0.7 ng/ml (0-1.5)
【画像所見】
骨盤部造影MRIでは骨盤腔内に直径12cmの腫瘤性病変があり、脂肪を多く含み、二ボーを形成していた。頭側に充実性の領域があり、強い造影効果を示し ておりMalignant teratomaが疑われた。また、傍大動脈と閉鎖孔にリンパ節腫大を認め、転移が示唆された。
【術中所見】
右卵巣腫瘍1490g新生児頭大、頭側は充実性部分で尾側は嚢胞性であった。腹水と骨盤底に転移性病変と思われる結節が見られ、腫瘍は大網や腸管と軽度癒 着していた。傍大動脈リンパ節は3cmを超え、触診上動脈との癒着を疑われたため摘出を断念した。腹水細胞診は陽性であった。
【肉眼所見】
右卵巣は充実性病変と嚢胞部分から構成されていた。嚢胞壁内には毛髪が充満しており、壁付近には脂肪も認められた。充実性部分は白色調の部分と黄色調の部分からなり、部分的に出血も見られた。
【組織所見】
成熟奇形腫成分に連続して上皮性悪性腫瘍が認められた。
【配布標本】充実性病変部
【問題点】病理組織学的診断、組織発生と分化、悪性度

マクロ1 ミクロ1 ミクロ2 ミクロ3 ミクロ4 ミクロ5

【結論】Large cell neuroendocrine carcinoma arising from mature teratoma

659:胎児水腫の1剖検例

関西医科大学 第一病理(1)、外科(2)、病理解剖(3)、中検病理(4)、産婦人科(5)、大阪日本赤十字病院 病理部(6) 
三宅 岳1, 2)、足立 靖1, 3, 4)、金森千春5)、保坂直樹1)、新宅雅幸6)、神崎秀陽5)、上山泰男2)、池原 進1)

【症例】胎齢20週 女児(人工妊娠中絶)母体30歳代前半、経産婦
【家族歴】特記すべきことなし。
【現病歴及び入院時所見】
他院で妊娠後外来にて妊娠管理を行われていた。妊娠後特に異常所見は認められなかったが、妊娠18週時の診察にて胎児水腫を指摘され当院紹介受診された。 母体に紅班、感冒様症状を認めなかった。胎児はエコー所見上、全身水腫、腹水貯留を認め、高度の胎児水腫と診断され、20週で人工妊娠中絶が施行された。


マクロ ミクロ

【結論】Parbovirus B19 infection

660:急性の経過をとった小児卵巣腫瘍の1例

神戸大学外科病理学教室(1)、宝塚市立病院(2)
宇佐美 悠1)、流田 智史2)

【症例】10歳代前半、女性    
【主訴】下腹部違和感と持続する発熱   
【現病歴】
下腹部違和感と持続する発熱を主訴に近医受診、下腹部精査目的に当院婦人科を紹介受診された。画像上、骨盤内を占拠する脂肪成分を含む内部不均一腫瘍が認 められGiant dermoid cyst と診断された。胸腹水の貯留も認められた。Giant ovarian tumor の臨床診断の元、開腹にて右卵巣腫瘍摘出術を施行された。また術前に出現した両側乳房の多発、うずら卵大腫瘍に対して術中に針生検が行われた。摘出された 右卵巣腫瘍は1400g、肥厚した壁を有す割面白色の嚢胞様病変であり内容物はおから状角質および毛髪を含むものであった。
その後転院し、5か月後亡くなった。      

【結論】Malignant melanoma arising in mature cystic teratoma
 

661:胃腫瘍の1例

市立堺病院病理・研究科(1)、外科(2)
和田 直樹1)、山内 道子1)、大城 良太2)

【症例】70才代後半,男性
【既往歴】
慢性腎不全(4-5年前から)
肝細胞癌(2年前)[←肝硬変←C型肝炎]
高血圧・糖尿病・貧血
【現病歴】
 2年前、肝腫瘍にて手術既往(S8肝切除術)がある70才代後半の男性。肝細胞癌であったが、術後経過は良好であった。他院でその経過観察中、CTにて 胃の内腔突出型の腫瘤を認めた。胃腫瘤は5cm、1型、易出血性の柔らかい腫瘍であり、噴門との距離が近く、胃全摘術の適応と考えられた。後日、胃全摘 術、R-Y再建が施行され、術中所見は、胃体上部小彎やや前壁より噴門にかかる腫瘍で、リンパ節転移陽性であった。特殊染色、免疫染色も合わせて手術材料 の病理組織学的検査を施行した。
【病理所見】
マクロ・ミクロ写真:インターネット参照して下さい。
特殊染色・免疫染色は以下の通りです。
PAS:sigを示唆する細胞質内粘液陽性像を一部認める。
NSE:陰性 Synaptophysin:陰性領域もあるが、陽性像が比較的目立つ。
CD56:陽性(Synaptophysinよりは弱い)像を認めるが、Synaptophysinより陰性領域が広い。
クロモグラニン:陰性 
MIB-1:場所によってproportionにバラツキがある。129/200(64.5%),106/200(53%),56/200(28%),0/200(0%)など。
なお、総合的に判断すると、少なくとも15%以上。
【問題点】病理診断


マクロ1 マクロ2 マクロ3
ミクロ1 ミクロ2 ミクロ3 ミクロ4

注:ミクロ写真は一枚2MB程度あります。

【結論】Poorly differentiated neuroendocrine carcinoma with foci of adenocarcinoma