日本病理学会近畿支部第35回学術集会 検討症例



662:膀胱腫瘤の1例

滋賀医科大学医学部付属病院検査部(1)、病理部(2)
小島史好1)、九嶋亮治2)、松原亜季子2)、石田光明1)、岡部英俊1, 2)

【症例】30歳代後半、女性
【既往歴】20歳代 右卵巣漿液性腫瘍摘出、30歳代 直腸内膜症
【現病歴】不妊治療にて妊娠に至るも、不全流産にて子宮内容除去術を施行される。その後の超音波検査で膀胱後壁に2cmの腫瘤が指摘されたため、膀胱鏡検 査を施行したところ、非乳頭状cysticな、広い茎を有する病変が認められた。粘膜面は正常と思われ、粘膜下腫瘍の存在が示唆された。TUR-BT施行 に伴い、黄白色粘稠な液体が流出した。TUR-BTを二期的に施行し、ほぼ全tumorを切除した。術後9ヶ月目に超音波検査にて同病変の再発を確認した が、増大傾向はないため、経過観察していたが、術後約3年経過したところで、患者様の希望により、再度膀胱鏡検査を施行した。膀胱後壁に3cmほどの乳頭 状の病変を認め、これを切除した。
【配布標本】初回TUR-BTにて切除した病変
 

エコー、CT
  膀胱鏡
ミクロ1 ミクロ2 ミクロ3 ミクロ4 ミクロ5 ミクロ6


663:乳腺腫瘍の一例

京都府立医科大学病院病理部
丹藤 創、安川 覚、中尾 龍太、安原 裕美子、浦崎 晃司、小西 英一、浜田 新七、柳澤 昭夫

【症例】70歳代、女性
【既往歴】右AC領域乳癌に対して、術前化学療法後右乳房切除術+右腋窩リンパ節廓清術施行 (T4N0 stage IIIB)。
【現病歴】
右腋窩リンパ節の腫大を認め、診断目的でリンパ節摘出術を施行 (配布標本)。
【配布標本】右腋窩リンパ節摘出検体
【配布標本の病理組織学的所見】
Myxoidな基質を背景にして、リンパ管様の腔形成を示した腫瘍が筋肉にも及ぶ浸潤性増殖を呈している。それぞれの腔内には粘液を推定する灰白色物質を含有している。構成している細胞には異型が認められる。
【問題点】病理組織学的診断、転移か否か
 



664:腫瘍合併脂腺母斑の一例

市立堺病院病理・研究科(1)、皮膚科(2)、
和田 直樹1)、山内 道子1)、大川 たをり2)

【症例】30歳代後半,男性
【既往歴】蓄膿症
【現病歴】
出生時より右側頭部、右耳上部に皮膚腫瘍があった。同部に発毛はなかった。隆起してきたため6~7ヶ月程前に当院皮膚科受診し、皮膚生検(3ヶ所)施行。本人の都合により、手術をすぐに施行できなかったが、1ヶ月程前に全摘・植皮術施行。
【皮膚腫瘍詳細】
右側頭部、右耳上部に1~2cm大の黄褐色顆粒状の扁平隆起性腫瘤(#1)。同部の下方に4~5cm大の血管拡張性肉芽腫様有茎性腫瘤を主に伴う黄褐色顆 粒状腫瘤(#3)#3直下、及び#1内に黒色丘疹・結節(#2:#3直下のもの)。#1, #2, #3からそれぞれ生検。

 
マクロ1 マクロ2 マクロ3
ミクロ1 ミクロ2 ミクロ3


665:子宮外悪性中胚葉性混合腫瘍の臍転移再発の一例

大阪府立成人病センター病理・細胞診断科(1)、婦人科(2)
大阪労災病院 臨床病理科(3)
片岡 竜貴1)、塚本 吉胤1)、松村 真生子1)、太田 行信2) 、上浦 祥司2) 、川野 潔3)、石黒 信吾1)

【症例】60歳代後半の女性、経産婦、57歳にて閉経。
【既往歴・家族歴】20歳代に胆石で胆嚢摘出術施行。その他には特記すべきことはなし。
【現病歴】
腹痛で近医受診。 CA125高値で、MRIにより骨盤内に径6cmの腫瘤を指摘された。 腹水細胞診で腺癌を指摘され、卵巣癌の腹腔内播種ないしは腹腔 原発腺癌と診断され、治療目的で当院に転院となった。当院で、子宮・卵巣・卵管・大網合併切除となった(Ope.1)。 骨盤内の腫瘤は悪性中胚葉性混合 腫瘍と診断された。 子宮については腹膜面の悪性中胚葉性混合腫瘍が播種している以外には著変はなかった。 卵管にはserous adenocarcinomaが見られた。その後、paclitaxelとcarboplatinを用いた化学療法を6ヶ月施行したが、腹部CTで臍部に 径3cmの腫瘤が出現した。 悪性中胚葉性混合腫瘍の臍転移再発を考え、腫瘤摘出術を施行した(Ope.2)。 腫瘤は悪性中胚葉性混合腫瘍であったが、 その癌成分はOpe.1のものとは形態的に異なっていた。その後、ifosfamide, gemcitabine, docetaxelを組み合わせて化学療法を施行したが、Ope.2から2ヶ月後に腹腔内再発し、同3ヵ月後に永眠された。
【問題点】
Ope.2の臍部悪性中胚葉性混合腫瘍は、Ope.1の子宮外悪性中胚葉性混合腫瘍由来なのか、卵管癌由来なのか。 
Ope.1の子宮外悪性中胚葉性混合腫瘍と卵管癌には関連があるのか。


 

666:左鼻腔腫瘍の一例

兵庫医科大学 第1病理(1)、耳鼻咽喉科(2)
隈病院 病理細胞診断部(3)
山根木 康嗣1)、中正 恵二1)、大山 秀樹1)、宇和 伸浩2)、
荻野 公一2)、藤 久仁親2)、寺田 友紀2)、廣川 満良3)、坂上 雅史2)、寺田 信行1)

【症例】70歳代前半、女性
【主訴】左鼻出血
【既往歴】花粉症、喘息、高血圧
【現病歴】
入院3ヶ月前より左鼻出血を繰り返すため近医を受診。左下鼻甲介に易出血性腫瘤を指摘され、精査・加療目的にて当院耳鼻咽喉科に入院となった。鼻腔内視鏡 検査で、粘膜表層にびらんを有する弾性軟の腫瘍を認めた。CTでは、左下鼻甲介周辺に20×30㎜のenhanceされる腫瘤が認められた が、上顎洞内への浸潤は認めなかった。左鼻腔腫瘍の診断のもと、腫瘍摘出術が施行された。術中所見では腫瘍は鼻腔側壁との癒着はなく容易に剥離でき、上顎 洞内側への浸潤も認めなかった。尚、術後6ヶ月後の観察では切除部での再発を疑わせる粘膜の隆起が認められている。
【病理組織学的所見】
腫瘍は腺管成分および明調な胞体を有する紡錘形の筋上皮類似細胞成分から構成された均一な増生パターンを示した。腫瘍腺管内にはPAS陽性、alcian-blue陽性の粘液を認め、紡錘形腫瘍細胞にはdiastaseで消化されるPAS陽性のglycogenを認めた。
免疫染色では腺上皮、紡錘形腫瘍細胞ともにAE1/AE3陽性であったが、S-100蛋白は陰性であった。glycogenを有する紡錘形腫瘍細胞は α-smooth muscle actinおよびvimentin陽性を示した。MIB-1 labeling indexが組織標本全体で10%程度であった。
【問題点】病理組織学的診断
 



667:同種骨髄移植後に急性腎不全を発症した一剖検例

関西医科大学第一病理学教室(1)、第一内科(2)、
北海道大学医学部血液内科(3)
重松明男1, 3)、足立靖1)、松本憲明2)、小柳津治樹1, 2)、桐山直子1)、向出裕美1)、今村雅寛3)、福原資郎2)、池原進1)

【症例】40歳代後半、女性
【既往歴・家族歴】特記事項無し
【現病歴及び入院後経過】
急性骨髄性白血病 (FAB分類;M1)を発症。寛解導入療法1コースにて完全寛解に導入した。地固め療法2コース施行後、発症1年半後に AraC/Cyclophosphamide /全身放射線照射の前処置、Cyclosporine A (CyA)+Methotrexateの急性GVHD予防法にて、同胞間同種骨髄移植を施行した。生着はday14、急性GVHDはGrade 1であった。移植後day80に退院し、以後CyA100mg/dayにて外来フォローとなった。帯状疱疹を発症したため、day138に再入院となり、 Aciclovirの投与を行った。入院後数日目より、貧血と血小板減少が出現、さらに腎障害が進行、肺出血を合併、MOFとなりday167に死亡し た。慢性GVHD、原疾患の再発は認めなかった。
【検査所見】腎障害の進行する一週間前
赤血球 275×104/μl、Hb 7.8g/dl、白血球 4300/μl (好中球 63%、リンパ球 27%)、血小板3.2×104/μl、網状赤血球 3.28‰、LDH 445 IU/l、T-Bil 1.5mg/dl、D-Bil 0.4mg/dl、BUN 22mg/dl、Cr 0.9mg/dl、CRP 0.84mg/dl
ハプトグロビン<10mg/dl、トロンボモジュリン 13FU/ml (正常<4.5)
【配布標本】剖検時腎臓
【問題点】病理組織学的診断