病理を学んでよかった
大阪大学医学部学友会理事長
松本 圭史
私は、阪大医学部昭和28年の卒業で阪大病理教授を15年前に退官しているので、現役の病理研究者である諸先生からみると過去の存在であり、有益な意見
を述べられそうにない。しかし、以下のように考えた。卒業後直に病理学教室に入ってその教授も勤めた私は、個人としては内分泌(主にステロイド生化学)研
究を主として行い、60歳頃からは阪大医学部長、大阪府立母子医療センター総長、大阪血液センター所長、阪大医学部学友会理事長などの管理職ばかりを勤め
た。したがって、病理を学んだことによって生じた利点をのべれば、先生方の参考になる可能性はあると考えた。
日本は、乳癌、前立腺癌などの性ホルモン依存性癌の発生率が欧米の1/10と低値であった。したがって、性ホルモン依存性癌の国際研究が
1970—1985年にかけて施行され、日本研究者としては臨床医、生化学者、理学部研究者など15名が参加した。性ホルモン、機能と形態が
分り、臨床も理解できるということで私がリーダーに選出された。病理であったお陰で国際的に長く活躍でき、本も出版できた。
また、病理に本籍を置く内分泌研究者であった私は、基礎、臨床の各分野の実力・実績と必要性を比較的公平に評価できたので、前述の諸組織の運営を比較的スムーズに実行できたと考えている。病理教室で学ぶことができたお陰であると感謝している。