677:術前診断が困難であった肺腫瘍

宇佐美 悠(1, 4)、今井 幸弘(1)、片上 信之(2)、小松 輝也(3)、横崎 宏(4)
神戸市立医療センター中央市民病院 臨床病理科(1)、先端医療センター(2)、胸部外科(3)、神戸大学医学部病理学講座(4)



【症例】60歳代、女性

【現病歴】
健康診断にて胸部異常影指摘され、当院受診。胸部単純レントゲンおよびCTにて左肺上葉に境界明瞭な1.5 cm大の類円形の結節性病変が認められた。臨床的に、肺癌、転移癌、過誤腫、結核などを鑑別に挙げ、CTガイド下針生検が施行された。生検組織において は、cytokeratin陽性の肺胞上皮がスリット状の腔を形成し、線維化を伴うことから、硬化性血管腫を疑った。胸腔鏡補助下左肺上葉部分切除術が施 行された。

【既往歴】11年前に口腔癌の診断のもと、他院にて切除術を受けている(詳細不明)。

【肉眼所見】病変は境界明瞭な弾性硬、白色充実性腫瘍であった。

【組織所見】
明らかな被膜を有さない境界明瞭な腫瘍で、多角形細胞が充実性、索状、腺管状の増生を示し、一部の間質には硝子化が認められた。また、ごく一部では、細胞 がばらけ、軟骨様の基質が細胞間に認められた。免疫染色では、synaptophysin、NCAM陰性、CEAは管腔形成細胞に陽性、 cytokeratinは上皮様細胞の全てで陽性、vimentin、S100、α-SMAはその一部の細胞に陽性であった。核異型は軽度で あった。

【問題点】
切除検体のHE所見から、多形腺腫と考えたが、免疫染色上、同定される筋上皮成分はわずかであった。肺原発多形腺腫はまれであり、病理組織学的診断および鑑別すべき腫瘍、唾液腺からの転移との鑑別等を御教授いただきたく、提示する。