686:小児脳腫瘍の一例
石原美佐(1)、宮川 文(1)、中嶋安彬(1)、羽賀博典(1)、吉澤明彦(1)、小谷泰一(1)三上芳喜(1)、
高橋 潤(2)、真鍋俊明(1)
【症例】 5才男児
【現病歴】 3年前に痙攣様の症状があり、CT、MRIにて後頭蓋窩くも膜嚢胞を指摘された。1ヶ月半前に頭痛を訴え、近医でMRIを撮影し、右後頭葉に脳腫瘍を指摘され、手術目的で当院に紹介された。
【入院時所見】 神経学的異常を認めず
【MRI所見】 右後頭葉内側に15mmの、均一に造影される腫瘤性病変を認める。周囲に浮腫を伴う。腫瘍は白質に主座をおき、一部皮質にも浸潤し、内側では側脳室後角に接する。WHO grade 3以上のglioma、 gangliogliomaなどが第一選択で、ependymoma、pilocytic astrocytomaも鑑別に挙がる像であった。
【手術所見】 右後頭葉の腫瘤を一塊に摘出
【組織所見】
皮質内に好酸性の細胞質を持つ紡錘形細胞が、束状になり錯綜するように増生し、大きな結節を形成している。主病変周囲には脳組織が介在し、多結節性に血管
周囲に紡錘形細胞が増生している。核分裂像はごくわずか(標本内1個程度)、壊死、細血管増生はみられない。非腫瘍部では皮質内の神経細胞の配列の乱れ、
白質での神経細胞が存在など、cortical dysplasiaが示唆された。
組織学的鑑別として
intracerebral meningioma, meningioangiomatosis, intracerebral schwannoma が考えられた。免疫組織化学法で、腫瘍細胞にS100(+), GFAP(-), EMA(-)であり、intracerebral
schwannomaと診断した。
【配布標本】 腫瘍本体
【問題点】 組織診断、特徴的な血管周囲の発育形式、病変分布、発生部位、疾患背景について