691:耳下腺腫瘤の一例
1)大阪大学 大学院歯学研究科 口腔病理, 2)住友病院 病理部
佐藤 淳1)、中塚伸一2)、岸野万伸1)、藤田源太郎1)、結城美智子1)、小川裕三1)、豊澤 悟1)
【症例】80歳。女性。
【家族歴、既往歴】特記すべきことなし。
【現病歴】
約3週間前に左耳下腺部の腫瘤に気付き、近医を受診。両側耳下腺付近に多発性の腫瘤を認めたため、住友病院へ紹介となった。同院にて、穿刺吸引細胞診により、class IIIと診断され、その後、精査のため生検術が2回施行された。
【画像所見】 MRIにて、両側耳下腺部に多発性の腫瘤が認められた。最大径は、23.2mm大で、周囲組織との境界は明瞭、類円形であった。CTにおいても同様の腫瘤が認められ、Warthin’s tumorないしはMalignant lymphomaが疑われた。FDG-PETも施行されたが、腫瘤への集積は認められなかった。
【病理組織所見】
腫瘤はclear cellの増生が主体をなす病変であり、部分的に小葉構造も認められた。また、一部に好酸性の胞体を有する細胞の集簇が観察された。周囲に明らかな被膜構造は認められなかったが、正常耳下腺組織との境界は明瞭であった。これらの細胞のN/C比は低く、核は小型で円形であり、明瞭な分裂像は認められなかった。PAS染色にて、部分的に陽性所見がみられ、酵素消化により消失した。またPTAH染色では、好酸性細胞が青く染色された。免疫組織化学的には、構成細胞はcytokeratin(AE1/AE3)陽性で、vimentin、S100、α-SMAには陰性であった。
【配布標本】
2回施行された生検標本(3セット分のみの用意です)
【問題点】
病理組織学的診断
【画像1】 【画像2】 【画像3】 【画像4】