696:肺癌治療に対する胸壁再建術後20年目に発症したリンパ腫の一例

(1)京都桂病院 病理科、(2)京都大学医学部附属病院 病理診断部
藤本正数(1)、小原詠水(1)、石原美佐(1)、水田直美(1)、羽賀博典(2)、真鍋俊明(2)

【症例】 80歳代男性

【既往歴】
30歳代:肺結核症で当院入院。その後結核菌は検出されていない。
50 歳代:肺扁平上皮癌 (下葉S6から上葉,第7-9肋骨部に広がる, T3N0M0, Stage IIB)の治療のため左肺全摘+胸壁合併切除+胸壁再建術を受けた。胸壁再建にはpolyethylene terephthalate (PET)メッシュを使用し,術後に5000 cGyの放射線局所照射を行った。
70歳代:片肺換気及び慢性閉塞性肺疾患の増悪による呼吸不全で気管切開チューブ留置。

【喫煙歴】 25本/日×42年

【職業歴】 鉱山採掘夫5年、炭鉱夫 12年

【現 病歴】 在宅での呼吸管理が困難になった為当院入院。左背部の手術痕近傍に15 cm大の皮下腫瘤を認めた。胸部CTにて左背部胸壁に14.0 x11.0 x 6.6 cm大の境界明瞭な一部胸腔内に進展する腫瘍が存在。経皮生検でびまん性大細胞型Bリンパ腫 (CD20(+), CD30(+), bcl-2(+), MUM1(+), EBER(+))と診断した。入院4ヶ月目にリンパ腫、菌血症、低肺機能による多臓器不全で死亡。

【剖検所見】 リンパ腫の主座はPETメッシュ下の胸壁で、胸腔内にはメッシュを介して壊死腫瘍組織が認められた。膿胸の所見は明らかでなく、胸腔内の壊死組織から結核菌は検出されなかった。

【問題点】 胸膜に発生する悪性リンパ腫として慢性結核性膿胸後に発生するPyothorax-related Lymphoma (PAL)が知られているが,肺癌治療後に発症したPALは報告例がない。典型的なPALとの異同について。

【画像1】  【CD20】  【CD30】  【bcl-2】  【NUM1】  【EBER】