皮下脂肪織炎様T細胞性リンパ腫
Subcutaneous panniculitis-like T-cell lymphoma

 大阪市立大学附属病院 病理部
大澤 政彦

 皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫(Subcutaneous panniculitis-like T-cell lymphoma; SPTCL)はまれな疾患で皮下脂肪織を中心に腫瘍細胞の浸潤を生じる細胞傷害性T細胞によるリンパ腫とされている。これまでの報告では男女差は見られず、いずれの年代にも発症するが、40歳までの若年者に多い。結節性紅斑様の皮下結節を多発性に生じる。潰瘍化はまれであるが、大きくなると生じることもある。下肢に好発するが、体幹、顔面などにも見られることもある。約30% に診断時血球貪食症候群を合併している。リンパ節腫脹は認めない。組織所見の特徴は皮下脂肪織内にほぼ限局した腫瘍細胞の浸潤像であり、真皮への浸潤はほ とんど認めない。腫瘍細胞の大きさや異形度はさまざまであり、病初期の生検では異形が乏しいため結節性紅斑などの炎症性疾患と診断されていることがある。 典型例では中型から大型の腫瘍細胞が脂肪織小葉内に浸潤するlobular pannicultitisの像を示し、腫瘍細胞が脂肪細胞を取り巻くように配列する”lace-like pattern”をとる。壊死や核破砕像が高頻度に見られ、壊死部周囲には組織球浸潤が目立つ。約50%の症例では組織球に赤血球や核破砕物の貪食像を認める。腫瘍細胞はCD3陽性、cytotoxic molecules (granzyme B, T-cell intracellular antigen-1, perforinなど)陽性である。ほとんどがCD4陰性、CD8陽性であるが、まれにCD4陽性のものも報告されている。αβT細胞由来が主体であるがγδ細胞由来の症例も報告されてきた。2005年に発表されたWHO-EORTC分類では後者は皮膚γδT細胞リンパ腫に包含された。今後さらに再分類される可能性もあるが、現時点での疾患概念について、症例を示すとともに概説したい。