地域連合的診療の試み

大阪南医療センター臨床検査部長
 相馬 俊裕

 大阪リンパ腫研究会参加施設は大阪を中心とした地域の血液を専門とする病院59施設、5大学と拡大し、順調にリンパ腫の登録症例を積み重ねてきた。累積症例は現在3700を超え、2008年度中に4000症例に達するであろう。

 診 断に寄与することは当然のこと、強固な診断インフラの上に、臨床情報の収集と、治療の改善をめざすべく、臨床プロトコールの運用を模索してきた。われわれ の集めた臨牀データは従来の「プロトコール参加要件」の制限によらない、実際の治療空間の実態を現す資料としてきわめて重要である。その結果を報告した い。

 またさらに歩みを進め、病理診断と有機的に結合した臨床体制を構築するべく、昨年より6個のプロトコールが開始され、また新しく1つのプロトコールが審査中である。現在稼働中のプロトコールは申請年代順に

 #1大阪市立大学医学部 血液病態診断学提唱の「悪性リンパ腫に対するCHOP(-R)療法に伴う慢性心毒性のバルサルタンによる予防効果の検討」

 #2近畿大学医学部 血液内科提唱の「再発・治療抵抗性中高悪性度 B細胞性非ホジキンリンパ腫を 対象としたRituximab 併用 MECP療法(R-MECP 療法)のPhaseStudy」#3関西医科大学 第1内科提唱の「CD20陽性の未治療 Low-Intermediate risk 濾胞性リンパ腫に対するRituximab 単独および維持療法の臨床第Ⅱ相試験」と

 #4「CD20陽性の未治療 High risk 濾胞性リンパ腫に対するshort-CHOP+Rituximab 寛解導入療法およびRituximab 維持療法の臨床第Ⅱ相試験」、

 #5宝塚市立病院 内科提唱の「再発・治療抵抗性悪性度 B細胞性非ホジキンリンパ腫を対象としたRituximabCladribine 併用療法(RC療法)のPhaseStudy 

#6大阪南医療センター提唱の「高齢者中高悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫を対象とした用量調整R-THP-COP療法(Rituximab 併用 THP-COP療法)Pilot Study」である。

 また近年抗HBV剤の開発により、従来困難であった、HBV既感染者の安全な化学療法も可能となってきた。この状況に適応するため近畿大学血液腫瘍内科が中心になり

#7「B型肝炎ウイルス(HBV)キャリアの悪性リンパ腫治療に伴うB型肝炎再活性化のエンテカビルによる予防効果の検討」を計画中である。

 さらに高度な病理診断と診療の結合が治療結果の向上につながるように努力したい。