EBウィルス髄膜脳炎およびCD8陽性T細胞のモノクローナル増殖を呈したMTX加療リウマチの一例

北野病院 リウマチ膠原病内科
  籏智さおり, 八木田正人

 10年来の関節リウマチ(RA)に対しメソトレキセート (MTX)、ミゾリビン内服加療中の75歳女性が、2週間続く発熱のため来院。頚部・腋窩・鼠径リンパ節腫大と汎血球減少 (WBC 2200/ml, Hb 9.8g/dl, Plt 8.8/ml)を認めたため入院となった。

 骨髄穿刺では低形成髄で異型性はなく薬剤性血球減少と考え免疫抑制剤を中止した。数日で血球数は増加傾向となったが、発熱、リンパ節腫大は続き、10日後より意識障害と痙攣が出現。末梢血液中に異型リンパ球を多数、脳脊髄液中に異型リンパ球主体の細胞増多と蛋白上昇を認めた。

EBウィルス(EBV-DNA定量は血液中7400copy/ml、髄液中2400copy/mlと上昇しておりEBV髄膜脳炎と診断した。ステロイドパルス、アシクロビル点滴により臨床状態、検査所見ともに改善した。また、ステロイド開始前に採取した頚部リンパ節生検組織で、HE染色では胚中心の乏しい濾胞構造の破壊、傍皮質細胞の拡大が目立ち、伝染性単核球症に類似の変化であり、表面マーカーはモノクロナリティーを示唆する所見を認めなかったが、サザンブロットにてEBVのクロナリティーとTCR-Cβ1再構成を認めた。

さらなる検討でCD8陽性T細胞の一部でEBER陽性であった。この結果はCD8陽性T細胞のモノクローナル増殖を示唆する所見と考えられる。その後の臨床経過は、少量プレドニンの継続で、ウィルス感染症状はなく、表在リンパ節は触知せず、RA増悪も認めていない。

 本症例はMTX加療中の免疫不全下にEBV関連CD8陽性T細胞のモノクローナル増殖を認めたと考えられるが、ステロイド使用のみで寛解に至っており示唆に富む症例である。